交通安全白書は、交通安全対策基本法第13条にもとづいて政府が毎年国会に提出する報告で、令和8年版は56回目にあたります。内閣府が2026年6月に公表しました。白書の数字は、原則として2026年3月31日までに各府省庁等が公表したデータにもとづいています。
令和8年版の特集は「道路交通の安全確保に向けた新たな挑戦」で、第12次交通安全基本計画の策定を扱っています。計画の目標と施策は第12次交通安全基本計画の記事で読めるので、ここでは特集の第2章「近年の道路交通事故の状況」を中心に、白書の図表にある数字を整理します。
令和7年の全体像——死者は最少、重傷者は増加
白書によれば、令和7年の交通事故死者数は2,547人でした。2年連続の減少で、現行の交通事故統計となった昭和23年以降で最少です。過去最悪だった昭和45年の16,765人と比べると6分の1以下になりました。
| 区分 | 令和7年 | 前年との差 |
|---|---|---|
| 交通事故発生件数 | 287,023件 | −3,872件(−1.3%) |
| 死者数 | 2,547人 | −116人(−4.4%) |
| 重傷者数 | 27,563人 | +278人(+1.0%) |
| 死傷者数 | 341,055人 | −6,003人(−1.7%) |
※ 令和8年版交通安全白書 特集-第1表・第1編第1部第1章「令和7年中の道路交通事故の概況」による。
死者が減る一方で、重傷者は増えました。第11次交通安全基本計画が掲げた「令和7年までに死者2,000人以下・重傷者22,000人以下」の目標は、どちらも達成できなかったと白書は書いています。
令和2年と比べた死者数の減り方は、状態によって大きく違います(特集-第9図)。全体の−10.3%に対して、自転車乗用中は−27.0%、自動二輪車乗車中と歩行中はともに−11.2%、一般原付乗車中は−5.0%、自動車乗車中は−1.5%でした。
生活道路——死亡事故が3年ぶりに増えた
特集の第8節は、生活道路の傾向を扱っています。ここでの「生活道路」は、車道幅員5.5m未満の道路として集計した数字です。
| 年 | 死亡事故(生活道路) | 死亡事故(その他の道路) | 重傷事故(生活道路) | 重傷事故(その他の道路) |
|---|---|---|---|---|
| 平成28年 | 587件 | 3,203件 | 8,872件 | 26,508件 |
| 令和5年 | 408件 | 2,210件 | 6,279件 | 20,009件 |
| 令和6年 | 392件 | 2,206件 | 6,131件 | 19,779件 |
| 令和7年 | 454件 | 2,041件 | 6,030件 | 20,115件 |
※ 令和8年版交通安全白書 特集-第32図・第33図による。
令和7年の生活道路の死亡事故は454件で、前年より62件増えました。白書は「3年ぶりに前年と比較して増加」と書いています。同じ年、その他の道路の死亡事故は165件減っています。平成28年を100とした指数は、生活道路が77.3、その他の道路が63.7で、生活道路のほうが減り方が小さくなっています。
一方、重傷事故は向きが逆で、生活道路が減り、その他の道路が増えました。白書は令和7年に死亡事故が増えた理由を書いていないので、1年分の増加だけで傾向が変わったとは言えません。
誰が被害に遭っているかは、年齢で大きく違います(令和3〜7年の合計・特集-第34図・第35図)。
- 死者: 15歳以下は歩行中が48.5%で最も高く、16〜24歳は自動二輪車乗車中が33.3%で最も高くなっています。25歳以上は自動車乗車中が最も高く、65歳以上でも歩行中が30.6%を占めます。
- 重傷者: すべての年齢層で自転車乗用中が最も高く、15歳以下では59.2%です。
なお、この「5.5m未満」は事故を分析するための区分です。2026年9月1日に法定速度が30km/hになった道路は中央線等の有無で決まり、道幅では決まりません。白書の数字は令和7年までのものなので、30km/hへの引下げの効果はまだ含まれていません。
子ども——未就学児は自宅のすぐ近くで
特集の第3節と第8節には、子どもの事故の特徴が出ています。平成28年から令和7年までの死者・重傷者の合計では、未就学児は歩行中が1,326人(62.0%)、小学生は歩行中が4,576人(56.7%)で最も多く、中学生は自転車乗用中が2,998人(68.9%)で最も多くなっています。
歩行中の死者・重傷者を法令違反等別に見ると(令和3〜7年の合計・第1・第2当事者の合計)、飛び出しの割合に大きな差があります。
| 区分 | 飛び出し | 違反なし |
|---|---|---|
| 未就学児 | 38.6% | 26.0% |
| 小学生 | 31.3% | 43.0% |
| 中学生 | 17.6% | 56.7% |
| 全年齢 | 3.4% | 65.9% |
※ 令和8年版交通安全白書 特集-第18図による。
未就学児ではこのほかに、保護者が付き添わない「幼児のひとり歩き」が18.0%あります。
事故の場所にも特徴があります。歩行中の死者を自宅からの距離別に見ると(令和3〜7年の合計・特集-第36図)、未就学児は36人のうち15人(41.7%)が自宅から50m以内で、白書はこれを約4割と書いています。全年齢では13.5%です。重傷者でも、未就学児の28.5%が50m以内で、白書は未就学児と小学生の5割以上が自宅から500m以内で重傷を負っていると書いています(特集-第37図)。
死者の人数は未就学児36人・小学生29人・中学生9人と少ないので、割合は1人の違いで動きます。件数と合わせて読む必要があります。
運転する側から見ると、住宅の前や自宅の周りの道は、子どもが急に出てくる場所だということです。
歩行者——横断中の死者の44.4%は違反なし
状態別の人口10万人当たりの死者数は、令和7年に歩行中0.72人(全体の34.9%)、自動車乗車中0.70人(34.1%)で、この2つが高い水準にあります(特集-第19図)。死傷者のうち亡くなった人の割合も、自動車乗車中の0.4%に対して歩行中は2.2%です(特集-第8図)。
白書は欧米諸国との比較も載せています。交通事故死者に占める歩行中の割合です(2024年。アメリカは2023年)。
| 国 | 歩行中の割合 | 死者の総数 |
|---|---|---|
| 日本 | 36.1% | 3,221人 |
| イギリス | 25.0% | 1,671人 |
| アメリカ | 18.2% | 40,901人 |
| ドイツ | 14.5% | 2,770人 |
| フランス | 14.3% | 3,193人 |
| スウェーデン | 14.1% | 213人 |
※ 令和8年版交通安全白書 特集-第20図(IRTAD 資料)による。この図の日本の死者数は、ほかの節の24時間死者数とは別の数字です。
令和7年の歩行者の死者839人(列車事故を除く)を事故類型別に見ると、横断中が547人(65.2%)で、内訳は横断歩道以外の横断中が333人(39.7%)、横断歩道の横断中が214人(25.5%)です。重傷者6,857人では横断中が4,667人(68.1%)で、こちらは横断歩道の横断中のほうが2,629人(38.3%)と多くなっています(特集-第21図)。
横断中の死者547人を歩行者側の法令違反で分けると、違反なしが243人(44.4%)、横断違反が215人(39.3%)、信号無視が53人(9.7%)でした。重傷者4,667人では違反なしが3,193人(68.4%)です(特集-第22図)。横断中に亡くなった人の半数近くは、歩行者の側に違反がありませんでした。横断歩道では運転者に歩行者を優先する義務があります。
高齢者——人口当たりの死者は約3倍
令和7年の死者のうち65歳以上は1,423人で、全体の55.9%です。人口10万人当たりの死者数は65歳以上が3.9人、65歳未満が1.3人で、約3倍の差があります(特集-第10図)。第1編は、致死率が他の年齢層の約7倍だとも書いています。
運転者としての特徴も出ています。一般原付以上の運転者が第1当事者となった死亡事故の人的要因では、操作不適の割合が年齢とともに上がります(令和7年・特集-第14図)。
| 区分 | 操作不適 | うちブレーキとアクセルの踏み違い |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 13.0% | 0.3% |
| 65歳以上 | 25.0% | 5.4% |
| 75歳以上 | 32.0% | 7.8% |
※ 令和8年版交通安全白書 特集-第14図による。第1当事者は、最初に交通事故に関与した当事者のうち最も過失の重い者。
高齢運転者の事故の特徴と制度は、高齢者の事故の記事でまとめています。
自転車・外国人・特定小型原付
自転車は、令和7年の死亡事故の38.5%(116件)、重傷事故の52.9%(3,337件)が出会い頭でした(特集-第24図)。法令違反別では、どちらも安全運転義務違反が最も多く、死亡事故で27.6%(83件)、重傷事故で35.0%(2,208件)です(特集-第25図)。
ヘルメットを着用していなかった人の致死率は0.51%で、着用していた人の0.33%の約1.5倍でした(特集-第26図)。自転車乗用中の死傷者のヘルメット着用率は、令和7年に全年齢で15.8%、中学生で43.9%、小学生で36.9%、高校生で13.6%、65歳以上で12.0%です(特集-第27図)。自転車の取締りの手続は青切符の記事で扱っています。
外国人運転者については、日本の運転免許を持つ外国人が令和7年に1,338,977人となり、平成28年から約60.7%増えました。外国人運転者による交通事故は平成28年の6,690件から令和7年の7,906件に、国際免許か外国免許を持つ外国人運転者のレンタカーの事故は134件から212件になっています(特集-第28〜30図)。白書が示すのは件数の推移で、免許保有者当たりの事故率は載っていません。免許保有者が約60.7%増えたのに対して、事故件数の増え方は約18%です。外国免許の切替えの制度は外免切替の記事で扱っています。
特定小型原動機付自転車は、令和7年の関連事故が386件で、そのうち運転者が飲酒していた事故が43件(11.1%)でした。取締りは37,185件です。令和7年中に特定小型原動機付自転車運転者講習を受けた人は2,990人でした(特集第7節)。取締りの内訳は電動キックボードの違反の記事にあります。
取締り——反則適用率96.0%、ひき逃げの検挙率61.5%
白書の第1編第1部第2章第5節「道路交通秩序の維持」には、取締りの数字があります。違反種別ごとの件数は令和7年の取締り状況の記事で扱っているので、ここでは白書で読める別の角度の数字を挙げます。
令和7年に反則行為として告知した件数は3,868,607件で、車両等の運転者の道路交通法違反(点数告知に係る違反を除く)の取締り件数に占める比率(反則適用率)は96.0%でした。いわゆる青切符の手続が、取締りの大半を占めていることになります。成人は3,794,187件、少年は74,420件です。行為別では、一時停止違反が1,132,490件(29.3%)、最高速度違反が811,166件(21.0%)、携帯電話使用等違反が181,295件(4.7%)でした。
高速道路の取締りは、令和7年に327,676件で、前年より29,165件(8.2%)減りました(第1-15表)。
| 主な違反 | 令和7年 | 構成率 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 最高速度違反 | 239,016件 | 72.9% | −7.8% |
| 車両通行帯違反 | 40,411件 | 12.3% | −8.6% |
| 車間距離不保持 | 2,881件 | 0.9% | −38.8% |
| 無免許、無資格運転 | 580件 | 0.2% | −1.5% |
| 酒酔い・酒気帯び運転 | 218件 | 0.1% | −11.0% |
※ 令和8年版交通安全白書 第1-15表による。
ひき逃げ事件(無申告事件を含む)の発生と検挙は次のとおりです(第1-16表)。死亡事故の検挙率が高い一方で、軽傷の事故では約6割にとどまります。
| 区分 | 発生 | 検挙 | 検挙率 |
|---|---|---|---|
| 死亡 | 98件 | 94件 | 95.9% |
| 重傷 | 914件 | 725件 | 79.3% |
| 軽傷 | 10,333件 | 6,158件 | 59.6% |
| 合計 | 11,345件 | 6,977件 | 61.5% |
※ 令和8年版交通安全白書 第1-16表(令和7年)による。
取締りの方針について、白書は平成25年の有識者懇談会の提言を踏まえ、飲酒運転や著しい速度超過など死亡事故に直結する悪質性・危険性の高い違反と、迷惑性が高く地域住民からの取締り要望の多い違反に重点を置いたと書いています。通学路等で可搬式の速度違反自動取締装置を活用したことも記されています。
ポイント:白書は事故と施策の報告で、それ自体が罰則や反則金を変えるものではありません。反則金の額は道路交通法施行令の別表第六、違反点数は別表第二で定められています。
数字を読むときの注意
- 図表ごとに期間が違います。令和7年の1年分のものと、令和3〜7年や平成28年〜令和7年の合計のものが混ざっているので、比べるときは期間を確かめてください。
- 歩行者の図の一部は第1・第2当事者の合計で、高齢運転者の図は第1当事者が一般原付以上の事故だけの集計です。同じ「死者」「死亡事故」でも分母が違います。
- 生活道路の62件増、その他の道路の165件減、外国人運転者の事故の約18%増は、白書の図の数値から当サイトが計算したものです。
- 死者数が少ない区分の割合は、1人の違いで大きく動きます。
住宅の前や学校の近くでは、子どもが急に道へ出てくることがあります。生活道路では速度を落とし、横断歩道の手前では歩行者の有無を確かめて、いつでも止まれるように走ってください。
見かけた取り締まりを共有して、みんなの注意喚起に。
よくある質問
交通安全対策基本法第13条にもとづいて、政府が毎年国会に提出する報告です。交通事故の状況、交通の安全に関する施策の計画、講じた施策の概況をまとめたもので、令和8年版で56回目です。道路交通のほか、鉄道・海上・航空の交通も扱っています。
令和8年版交通安全白書によれば2,547人で、前年より116人(4.4%)減り、現行の交通事故統計となった昭和23年以降で最少でした。一方で重傷者数は27,563人で、前年より278人(1.0%)増えています。
白書の集計では車道幅員5.5m未満の道路を指します。これは事故を分析するための区分で、2026年9月1日から法定速度が30km/hになった道路の決まり方(中央線等の有無)とは基準が違います。
令和3〜7年の合計で、歩行中の死者・重傷者に占める飛び出しは未就学児38.6%・小学生31.3%でした。全年齢では3.4%です。未就学児の死者は36人のうち15人(41.7%)が自宅から50m以内で亡くなっています。
車両等の運転者の道路交通法違反(点数告知に係る違反を除く)の取締り件数のうち、反則行為として告知した件数の比率です。令和8年版交通安全白書によれば、令和7年は告知件数3,868,607件で96.0%でした。
走行予定エリアを事前に確認し、事故の起きやすい交差点や歩行者の多い場所を「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりを避けるためではなく、安全運転のきっかけとしてお使いください。
都道府県別の取り締まりデータ
道路交通法違反の検挙件数(人口千人当たり・2023年度)は都道府県で差があります。全国平均は 36.1件。
47都道府県のランキングを見る本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。