横断歩行者妨害等は、令和6年中の取り締まりが32万件を超え、主な違反のなかでは数少ない「増えている」違反です。「渡ろうとしている人がいたら止まる」ことは広く知られていますが、道路交通法が求めているのはそれだけではありません。ここでは横断歩道の手前でかかる2つの義務と、反則金・点数の目安、そして取り締まりの実際を整理します。
横断歩行者妨害等とは
横断歩道や自転車横断帯(あわせて「横断歩道等」といいます)で、歩行者や自転車の通行を妨げた場合の違反です。根拠は道路交通法第38条で、施行令上の正式な反則行為名は「横断歩行者等妨害等」といいます。横断歩道のない交差点での歩行者優先(第38条の2)も、同じ反則行為として扱われます。
第38条第1項は、よく知られた「歩行者がいたら一時停止」だけを定めているわけではありません。実際には二段構えになっていて、前の段は歩行者が見えていなくてもかかります。
ポイント:横断歩道の手前では、歩行者が見えていなくても「止まれる速度で近づく」義務がかかっています。「歩行者がいたら止まる」は、その次の段階です。
反則金・違反点数の目安
横断歩行者妨害等に対する反則金・違反点数の目安は次のとおりです。
※ 金額・点数は一例です。反則金は交通反則通告制度に基づくもので、違反の態様や最新の法令により異なります。この違反には刑事罰として3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金も定められており、過失(うっかり)による場合も罰金の対象となることがあります。「拘禁刑」は2025年6月に懲役・禁錮を一本化した刑です。詳細は必ず公式情報をご確認ください。
ほかの違反の反則金や点数は、交通違反の反則金一覧と交通違反の点数一覧にまとめています。
「止まらなければならない」のはどんなときか
第38条第1項の二段構えを整理すると、次のようになります。
前の段は、横断しようとする歩行者等が「ないことが明らかな場合を除き」、横断歩道等の直前(停止線があるときはその直前)で停止できる速度で進行しなければならない、というものです。歩行者の姿が見えていなくても、いないと言い切れないかぎりはかかる義務です。見通しの悪い横断歩道ほど、この義務は実質的に重くなると考えられます。
後の段は、横断している歩行者等、または横断しようとしている歩行者等があるときは、その直前で一時停止し、通行を妨げてはならない、というものです。ここではじめて「止まる」ことが求められます。
前の段を守っていれば、後の段の一時停止は自然にできます。逆に、止まれない速度で横断歩道に近づいてしまうと、歩行者に気づいた時点ではもう止まれません。二段構えになっているのは、そのためだと考えられます。
横断歩道の手前でしてはいけないこと
第38条は、止まる義務のほかにも次のことを定めています。どちらも「見えていない歩行者」を守るための決まりです。
横断歩道等やその手前で停止している車両があるときは、その側方を通過して前方に出る前に一時停止しなければならないとされています(第2項)。止まっている車の陰から歩行者が現れることがあるためです。
横断歩道等とその手前30メートル以内では、前を進む車の側方を通過して前に出ることが禁止されています(第3項)。前の車が歩行者のために止まろうとしているかもしれないためです。
第3項が受け持つのは、進路を変えずに前に出る追い抜きのほうです。進路を変えて前に出る追越しは、この項ではなく追越しを禁止する場所を定めた第30条第3号が禁止しています。結果としてこの30メートル帯では追越しも追い抜きもできませんが、条文も反則行為名も分かれています。
どちらの項にも括弧書きの除外があります。第2項の対象になる横断歩道等からは、信号機の信号や警察官等の手信号によって歩行者等の横断が禁止されているものが除かれます。第3項が対象とする「前方を進行している他の車両等」からは、自転車や電動キックボード(特定小型原動機付自転車等)が除かれます。追越しを禁止する第30条にも同じ除外があるため、この30メートル帯で自転車を追い越すことや追い抜くこと自体は、どちらの規定の対象にもなりません。ただし、横断歩道等の直前で停止できる速度で進行する義務は変わらずかかります。
多い場所・時間帯
令和6年中に歩行者妨害として取り締まられた件数は323,280件で、前年の312,250件から約1万1千件(3.5%)増えています。主な違反種別の多くが減少するなかで、数少ない増加項目です。
JAFが2025年に行った全国調査では、信号機のない横断歩道で歩行者が待っているときに停止した車の割合は56.7%でした。前年より3.7ポイント上がって過去最高となった一方で、4割を超える車は止まっていないことになります。都道府県別では長野県の88.2%が最も高く、大阪府の35.5%が最も低いという結果でした。
死亡事故の発生場所を見ると、令和6年中は横断歩道上が219件(8.4%)、横断歩道付近が69件(2.7%)を占めています(死亡事故を対象とした統計です)。信号機のない横断歩道、通学路や生活道路の横断歩道は、とくに意識して速度を落としたい場所です。
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よくある質問
道路交通法は、横断しようとする歩行者等が「ないことが明らかな場合」を除き、横断歩道の直前で停止できる速度で進行しなければならないと定めています。「いないことが明らか」と言えるのは左右の見通しがきく場合などに限られ、見通しの悪い横断歩道では速度を落として近づくことが求められます。
判断に迷うときは、止まって道を譲るのが安全です。横断歩道の手前に人が立っていれば、渡る意思があるものとして扱うのが基本的な考え方とされています。目が合わない、スマートフォンを見ているといった様子でも、渡らないと決めつけないことが大切です。
横断歩道等やその手前で停止している車両があるときは、その側方を通過して前方に出る前に一時停止しなければならないとされています。停止車両の陰は歩行者が見えにくく、事故につながりやすいためです。また横断歩道等とその手前30メートル以内では、追い越すことも追い抜くこともできません。ただし禁止している条文は分かれていて、進路を変えて前に出る追越しを禁止するのは第30条第3号、進路を変えない追い抜きを禁止するのが第38条第3項です。
走行予定エリアを事前に確認し、横断歩行者妨害が起きやすい地点を「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりの回避を目的としたものではありません。
本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。