交通違反をすると、「点数が付いて免停になる」話と「罰金を払う」話が同時に出てきます。この2つは同じ手続きの一部ではなく、別々の機関が、別々の法律に基づいて進める2つの手続きです。ここでは、免許についての行政処分と、刑罰についての刑事処分がどう分かれているかを条文で確認します。
1つの違反に、手続きは2つ
行政処分は、免許を取り消したり、効力を停止したりする処分です。道路交通法103条1項は、免許を受けた人が運転に関して道路交通法などの規定に違反したとき(5号)は、住所地を管轄する公安委員会が、政令で定める基準に従い、免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができると定めています。基準は道路交通法施行令38条5項で、違反点数の累積が道路交通法施行令 別表第三の区分に達したかどうかで決まります。
刑事処分は、罰則に当たる行為に刑を科す手続きです。交通違反の罰則は道路交通法の第八章(115条〜124条)に並んでいます。刑事訴訟法247条は「公訴は、検察官がこれを行う」と定めており、起訴するかどうかは検察官が判断し、刑を科すのは裁判所です。
同じ1つの違反について、公安委員会は免許の処分を、検察官と裁判所は刑罰を、それぞれ決めます。
ポイント:「罰金を払った」ことと「免許の処分を受けた」ことは、別の手続きの結果です。片方が済んでも、もう片方が無くなるわけではありません。
行政処分と刑事処分の違い
| 項目 | 行政処分 | 刑事処分 |
|---|---|---|
| 決める機関 | 住所地の公安委員会(法103条1項) | 起訴は検察官(刑事訴訟法247条)、刑を科すのは裁判所 |
| 中身 | 免許の取消し、6月を超えない範囲の停止(法103条1項) | 拘禁刑・罰金など(刑法9条) |
| 根拠 | 道路交通法 第六章、施行令38条・別表第二・別表第三 | 道路交通法 第八章(罰則)、刑事訴訟法 |
| 何で決まるか | 違反点数の累積と前歴(施行令38条5項・別表第三) | 違反ごとに定められた法定刑の範囲内 |
| 処分の前の手続き | 違反による取消しや90日以上の停止などは意見の聴取(法104条1項) | 公判、または略式命令(刑事訴訟法461条) |
※ 法=道路交通法、施行令=道路交通法施行令。
刑法9条は、刑の種類を「死刑、拘禁刑、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする」と定めています。免許の取消し・停止はここに含まれません。 刑罰ではない処分なので、刑罰とは別に科されます。
例:酒気帯び運転・酒酔い運転・救護義務違反
同じ違反に2つの手続きがどう当てはまるかを、道路交通法と施行令 別表第二で並べると次のとおりです。
| 違反 | 刑事処分(法定刑) | 行政処分(違反点数) |
|---|---|---|
| 酒気帯び運転(呼気1リットルにつき0.25ミリグラム未満) | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(法117条の2の2第1項3号) | 13点 |
| 酒気帯び運転(呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上) | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(同上) | 25点 |
| 酒酔い運転 | 5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(法117条の2第1項1号) | 35点 |
| 救護義務違反(ひき逃げ) | 5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金。死傷が本人の運転に起因するときは10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(法117条1項・2項) | 35点 |
※ 違反点数は道路交通法施行令 別表第二。
前歴がない人の場合、累積点数が6点から14点までなら免許の停止、15点以上なら取消しの区分です(施行令38条5項・別表第三 一の表)。酒気帯び運転の13点だけで停止の区分に、25点だけで取消しの区分に入ります。
酒酔い運転と救護義務違反は、道路交通法103条2項(3号・4号)にも挙がっています。この項に当たると公安委員会は免許を取り消すことができ、免許を受けられない期間(欠格期間)は3年以上10年以下の範囲で指定されます(同条8項)。
ポイント:酒気帯び運転で3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象になることと、13点または25点が付いて免許の処分を受けることは、両方が起こり得ます。
よくある誤解
「罰金を払ったのだから、免停にはならない」 — 罰金は裁判所が科す刑で、免許の停止・取消しは公安委員会が行う行政処分です。決める機関も根拠も別で、罰金を納めたことで行政処分が無くなる定めはありません。
「不起訴になれば、免許の処分も無くなる」 — 刑事訴訟法248条は、検察官が犯罪の軽重や情状などから訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができると定めています。一方、道路交通法103条1項5号が行政処分の要件にしているのは、運転に関して道路交通法などの規定に「違反したとき」です。起訴されたことや有罪判決を受けたことは要件に入っておらず、刑事手続の結果を待つ定めや、不起訴を理由に処分しないとする定めも103条にはありません。
「反則金を払えば、点数も付かない」 — 反則金を納付した効果は、その行為について公訴を提起されず、家庭裁判所の審判にも付されないこと(道路交通法128条2項)です。これは刑事手続についての定めで、違反点数には触れていません。点数は施行令 別表第二で違反行為ごとに定められ、反則金を納めた違反の点数も累積します。
「免許の取消しは刑罰の一種」 — 刑法9条の刑に免許の取消し・停止は含まれません。行政処分として、刑罰とは別に行われます。
それぞれの手続きの流れ
行政処分の側では、違反ごとに付いた点数が原則として過去3年分で累積され(施行令33条の2第3項)、前歴の回数に応じた別表第三の区分に達すると停止・取消しの対象になります。点数の数え方は違反点数はいつ消える?、停止と取消しの基準は免許停止は何点からと免許取消しと欠格期間で整理しています。
- 違反による取消しや90日以上の停止などをしようとするときは、公安委員会は事前に意見の聴取を行います(道路交通法104条1項)。詳しくは意見の聴取とはを参照してください。
- 免許の停止を受けた人が講習を終了したときは、政令で定める範囲内で停止の期間を短縮できます(同法103条10項)。講習については停止処分者講習で扱っています。
刑事処分の側では、まず反則者に当たるかどうかで道が分かれます。
- 反則者に当たる場合(道路交通法125条2項)— 交通反則通告制度(同法 第九章)の対象になり、反則金を納付すれば公訴を提起されません(128条2項)。反則者の範囲は青切符・赤切符・白切符の違い、納め方と期限は反則金の納付方法と期限で整理しています。
- 反則者に当たらない場合(無免許・酒気帯び・交通事故を起こした場合など)や、反則金を納付しなかった場合 — 検察官が起訴するかどうかを判断します。簡易裁判所は、検察官の請求により、公判前に略式命令で100万円以下の罰金又は科料を科すことができます(刑事訴訟法461条)。検察官は請求の前に、略式手続によることに異議がないかを本人に確かめなければならず(同法461条の2)、略式命令を受けた人は告知を受けた日から14日以内に正式裁判を請求できます(同法465条)。公訴時効は交通違反の時効で扱っています。
2つの手続きは別々に進みますが、出発点はどちらも同じ1つの違反です。違反をしないことが、どちらの処分も受けないためのいちばん確実な方法です。日頃から安全運転を心がけてください。
見かけた取り締まりを共有して、みんなの注意喚起に。
よくある質問
なることがあります。罰金は刑事処分で、裁判所が科す刑です。免許の停止・取消しは行政処分で、住所地の公安委員会が道路交通法103条と道路交通法施行令38条の基準に従って行います。決める機関も根拠も別なので、罰金を納めたことで行政処分が無くなる定めはありません。
道路交通法103条1項5号が行政処分の要件としているのは、運転に関して道路交通法などの規定に違反したことです。起訴されたことや有罪判決を受けたことは要件に入っておらず、刑事手続の結果を待つ定めや、不起訴を理由に処分しないとする定めも103条にはありません。
付きます。反則金を納付した効果は、その行為について公訴を提起されず、家庭裁判所の審判にも付されないこと(道路交通法128条2項)で、刑事手続についての定めです。違反点数は道路交通法施行令 別表第二で違反行為ごとに定められ、累積点数が別表第三の基準に達すれば免許の停止・取消しの対象になります。
刑罰ではありません。刑法9条が定める刑は、死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料(主刑)と没収(付加刑)で、免許の取消し・停止は含まれていません。免許の取消し・停止は、道路交通法103条に基づいて公安委員会が行う行政処分です。
走行予定エリアを事前に確認し、「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりを回避する目的のものではありません。
都道府県別の取り締まりデータ
道路交通法違反の検挙件数(人口千人当たり・2023年度)は都道府県で差があります。全国平均は 36.1件。
47都道府県のランキングを見る本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。