累積点数が停止の基準に達すると、免許停止の処分を受けます(免許停止は何点から?)。停止の処分を受けた人は、講習を受けることで停止の期間が短縮されることがあります。この講習が、一般に「停止処分者講習」と呼ばれているものです。何日短くなり得るのか、講習は何時間か、誰が対象にならないのかを、道路交通法と同法施行令・施行規則の原文で確認します。
停止処分者講習は免許停止の期間を短くするための講習
道路交通法108条の2第1項は、公安委員会が行う講習を16号にわたって並べています。その3号が、免許の効力の停止などを受けた者に対する講習です。条文の見出しにも本文にも「停止処分者講習」という名前は出てきません。警察庁の運転免許統計(令和7年版)は、この講習の受講者数を「停止処分者講習の受講者数」として集計しています。
講習を終えた場合の扱いは、道路交通法103条10項が定めています。
- 公安委員会は停止の期間を短縮できる。 103条1項または4項による免許の効力の停止を受けた人が108条の2第1項3号の講習を終えたときは、政令で定める範囲内で、停止の期間を短縮することができます(103条10項)。
- 短縮は「できる」であって、日数までは決まっていない。 法令が決めているのは短縮できる上限(施行令33条の5)で、その範囲内で何日短縮するかは公安委員会が決めます。
ポイント:停止処分者講習は、免許停止の処分を受けた後に、申し出て受ける講習です。終えると停止の期間が短縮されることがあり、短縮できるのは40日以上の停止なら期間の半分までです。
停止の期間ごとの講習時間・短縮の上限・手数料
講習時間は停止の期間で3つに分かれます(施行規則38条3項5号)。短縮できる上限(施行令33条の5)と、手数料の標準額(施行令43条1項の表)を並べると次のとおりです。
| 停止の期間 | 講習時間 | 短縮できる上限 | 手数料の標準額 |
|---|---|---|---|
| 40日未満 | 6時間 | 講習を終えた日以後の停止の期間 | 11,700円 |
| 40日以上90日未満 | 10時間 | 停止の期間の2分の1 | 19,500円 |
| 90日以上 | 12時間 | 停止の期間の2分の1 | 23,400円 |
短縮できる上限。 施行令33条の5は、短縮できる範囲を「講習を終了した日以後における停止の期間」とし、そのうえで停止の期間が40日以上の場合は期間の2分の1を超えてはならないとしています。たとえば60日の停止なら30日、90日の停止なら45日、180日の停止なら90日が上限です。
講習を受ける時期。 講習は、停止の処分を受けた日から数えて停止の期間の2分の1が過ぎる前に終わるように行うと定められています(施行規則38条3項6号)。
講習の内容。 運転者としての資質の向上、運転に必要な適性、道路交通の現状や交通事故の実態などについて行います(施行規則38条3項2号)。教本・自動車等・運転シミュレーター・運転適性検査器材などを使い(同項3号)、コースでの運転やシミュレーターの操作、検査器材、筆記による適性の検査に基づく指導を含みます(同項4号)。
手数料。 講習の手数料は、政令で定める額を標準として都道府県が条例で定めます(道路交通法112条1項)。標準になる額は講習1時間あたり、物件費・施設費に対応する額が700円、人件費に対応する額が1,250円で、合わせて1,950円です(施行令43条1項の表)。上の表の額は、これに講習時間を掛けたものです。実際の額や申込み方法は、住所地の都道府県警察の案内で確認してください。
対象にならない人
108条の2第1項3号の講習の対象は、次の処分を受けた人です。
- 103条1項または4項による免許の効力の停止
- 90条1項ただし書による免許の保留、90条5項による免許の効力の停止(免許を受ける前の違反などが後から分かった場合)
- 107条の5第1項などによる6か月を超えない範囲の自動車等の運転の禁止(国際運転免許証などで運転している人が対象)
ただし、同号の括弧書きは次の人を対象から除いています。
| 対象から除かれる人 | 根拠 |
|---|---|
| 病気(幻覚の症状を伴う精神病・発作で意識障害などをもたらす病気など)、認知症、身体の障害、アルコール・薬物の中毒、適性検査の命令違反を理由に停止された人(103条1項1号〜4号)。保留・運転の禁止でも、病気などを理由とするもの(90条1項1号〜3号・7号、107条の5第1項1号)は同じく除かれる | 108条の2第1項3号の括弧書き(停止については103条10項の括弧書きも同じ) |
| 違反者講習(102条の2)の対象になったのに、期間内に受けなかった人 | 108条の2第1項3号の括弧書き |
免許の取消しは対象外です。 3号の講習は停止・保留・運転の禁止を受けた人のためのもので、取消しを受けた人の講習は同項2号の別の講習(施行規則38条2項が「取消処分者講習」と呼ぶもの・13時間)です。
令和7年中の受講者数
警察庁の運転免許統計(令和7年版)によると、令和7年中の停止処分者講習の受講者数は113,389人でした。統計は処分日数30日の講習を「短期」、60日を「中期」、90日・120日・150日・180日を「長期」として集計しています。
| 年 | 短期(30日) | 中期(60日) | 長期(90〜180日) | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 令和3年 | 116,811人 | 23,520人 | 18,571人 | 158,902人 |
| 令和4年 | 105,834人 | 21,027人 | 18,659人 | 145,520人 |
| 令和5年 | 95,346人 | 18,606人 | 18,446人 | 132,398人 |
| 令和6年 | 86,725人 | 17,137人 | 15,834人 | 119,696人 |
| 令和7年 | 82,880人 | 15,557人 | 14,952人 | 113,389人 |
同じ統計の令和7年中の免許の停止件数は145,694件(30日 94,595件・60日 21,382件・90日以上 29,717件)です。停止の件数と講習の受講者数は、年をまたいで受講する人がいることなどから対象がそろっていないため、割り算をしても受講した人の割合にはなりません。
よくある誤解
「停止処分者講習を受ければ、30日の免停がなくなる」とは言い切れません。 法令が定めているのは短縮できる上限だけで、何日短縮するかは公安委員会が決めます(道路交通法103条10項・施行令33条の5)。40日未満の停止では上限が「講習を終えた日以後の停止の期間」なので期間の2分の1という制限はかかりませんが、実際の短縮日数は住所地の都道府県警察の案内で確認する必要があります。
「停止処分者講習は受けなければならない」わけではありません。 講習は対象になる人からの申出によって行われます(施行規則38条3項1号)。受講を義務づける規定はなく、受けなければ停止の期間が短縮されないだけです。これに対し、違反者講習は「受けなければならない」と定められていて(道路交通法102条の2)、受けないと停止などの処分の対象になります。
「違反者講習と同じ講習」ではありません。 違反者講習(108条の2第1項13号)は、軽い違反で累積6点になった人が、停止の処分の前に、処分の代わりとして受ける講習です(違反者講習とは?)。停止処分者講習は、停止の処分を受けた後に、期間を短くするために受ける講習です。違反者講習の対象になったのに期間内に受けなかった人は、停止処分者講習の対象からも除かれます。
「講習で停止が短くなれば前歴にならない」わけではありません。 前歴に数える処分には、違反を理由とする免許の効力の停止が含まれます(停止の期間中に違反をしなかった場合。施行令 別表第三 備考一2)。この規定には、停止処分者講習を受けた場合を除くという定めはありません。前歴の数え方は免許の「前歴」とは?で確認できます。
停止処分者講習と関係する制度
- 免許停止の基準: 前歴の回数ごとに何点から停止・取消しになるかは免許停止は何点から?で扱っています。
- 意見の聴取: 90日以上の停止や取消しの前には意見の聴取が開かれます(意見の聴取とは?)。
- 免許の取消し: 取消しと欠格期間、取消処分者講習の位置づけは免許の取消しと欠格期間で確認できます。
停止処分者講習で期間が短くなっても、停止の処分を受けたことは前歴に数えられ、次に違反したときの基準が厳しくなります。処分を受けない運転がいちばんの近道です。日ごろから安全運転を心がけてください。
見かけた取り締まりを共有して、みんなの注意喚起に。
よくある質問
免許の効力の停止などの処分を受けた人に対する講習で、道路交通法108条の2第1項3号に定めがあります。講習を終えると、公安委員会は政令で定める範囲内で停止の期間を短縮できます(同法103条10項)。「停止処分者講習」は法令の用語ではなく、警察庁の運転免許統計などで使われている呼び方です。
法令が定めているのは上限だけです。短縮できるのは講習を終えた日以後の停止の期間までで、停止の期間が40日以上の場合は期間の2分の1を超えて短縮できません(道路交通法施行令33条の5)。たとえば60日の停止なら30日、90日の停止なら45日が上限です。実際に何日短縮するかは、この範囲内で公安委員会が決めます。
停止の期間で決まります。40日未満は6時間、40日以上90日未満は10時間、90日以上は12時間です(道路交通法施行規則38条3項5号)。講習は、停止の処分を受けた日から数えて停止の期間の2分の1が過ぎる前に終わるように行われます(同項6号)。
額は都道府県の条例で決まります。条例の標準になる額は政令で講習1時間あたり1,950円(物件費・施設費700円と人件費1,250円)と定められていて、6時間なら1万1,700円、10時間なら1万9,500円、12時間なら2万3,400円です(道路交通法112条1項・施行令43条1項)。
受講を義務づける規定はありません。講習は対象になる人からの申出によって行われます(道路交通法施行規則38条3項1号)。受けなければ、停止の期間は短縮されません。
走行予定エリアを事前に確認し、「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりを回避する目的のものではありません。
都道府県別の取り締まりデータ
道路交通法違反の検挙件数(人口千人当たり・2023年度)は都道府県で差があります。全国平均は 36.1件。
47都道府県のランキングを見る本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。