免許の停止や取消しの基準表には、必ず「前歴」の欄があります。同じ点数でも前歴の回数によって処分の重さが変わるため、前歴がいくつあるかは処分を左右する大きな要素です。ここでは、何が前歴に数えられ、どうなると数えられなくなるのかを、道路交通法施行令の原文で確認します。
前歴とは「過去3年以内に処分を受けたこと」
道路交通法施行令 別表第三の備考一は、前歴を「累積点数に係る当該違反行為をした日を起算日とする過去三年以内」に、一定の処分などに当たったことと定めています。数え始めるのは処分を受けた日からではなく、新しく違反をした日から3年をさかのぼります。
ポイント:前歴は「今度の違反をした日から見て、過去3年以内に処分を受けたかどうか」で数えます。処分から3年たった後の違反であれば、その処分は前歴に入りません。
前歴に数えられるのは、次の4つです。
| 前歴に数えるもの | 条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 違反を理由とする免許の取消し | 欠格期間中に違反をしていないこと | 備考一1 |
| 違反を理由とする免許の効力の停止 | 停止の期間中に違反をしていないこと | 備考一2 |
| 累積点数が取消しの区分(別表第三 一の表の第五欄・第六欄)に達したこと | その違反の後、第五欄なら2年・第六欄なら1年、違反をしていないこと | 備考一3 |
| 累積点数が停止の区分(同表の第七欄)に達したこと | その違反の後6か月、違反をしていないことなど。違反者講習を受けた場合は除く | 備考一4 |
※ 道路交通法施行令 別表第三 備考一による。国際運転免許証等を持つ人に対する運転の禁止の処分も同じように数えられます。
3つめと4つめは、処分を受けていないのに点数が処分の区分に達した場合の扱いです。たとえば免許が失効していたために処分を受けなかった人も、条件に当たれば前歴として数えられます(この場合の期間の起算は、別表第三 備考二が準用する施行令33条の2第4項による)。
前歴の回数で、処分になる点数が下がる
前歴があると、停止や取消しに届く点数が下がります。一般違反行為の場合は次のとおりです。
| 前歴 | 停止になる点数 | 取消しになる点数 |
|---|---|---|
| なし | 6〜14点 | 15点以上 |
| 1回 | 4〜9点 | 10点以上 |
| 2回 | 2〜4点 | 5点以上 |
| 3回以上 | 2点・3点 | 4点以上 |
※ 道路交通法施行令 別表第三 一の表による(停止=第七欄、取消し=第二欄から第六欄)。
前歴が2回あると、2点の違反1回でも停止の区分に入ります。停止の日数や取消しの欠格期間は、免許停止は何点から?と免許取消しと欠格期間で扱っています。
特定違反行為(酒酔い運転・危険運転致死傷など)の区分を定める別表第三 二の表にも、同じ前歴の欄があります。前歴がなければ35点から取消しで、前歴が増えるほど同じ点数でも欠格期間が長くなります。
前歴が数えられなくなる3つの場面
別表第三 備考一は、前歴を数えない場合を次のように定めています。
3年より前の処分。 前歴は違反をした日から過去3年以内に限られるので、それより前の処分は数えません。
通算1年の無違反。 免許を受けていた期間が通算して1年となったことがあり、その1年の間に違反をせず、取消しや停止などの処分も受けていなければ、その1年の初日より前の前歴は数えません(備考一ただし書)。この「免許を受けていた期間」からは、免許の効力が停止されていた期間が除かれます(施行令33条の2第3項1号。同号の定義は別表第三にも及ぶ)。停止の期間は、1年の無違反に数えられません。
取消しを受けたとき。 備考一の1または3(取消し、または取消しの区分に達したこと)に当たった場合、それより前のものは数えません(備考一ただし書)。取消しそのものが前歴1回となり、それ以前の前歴はそこで区切られます。
処分を受けると、点数が前歴1回に置き換わる
前歴のしくみは、累積点数の数え方とセットになっています。施行令33条の2第3項は、処分を受けた人について、処分より前の違反を累積点数から除くと定めています。
| 受けた処分 | 累積点数から外れるもの | 代わりに数えられるもの |
|---|---|---|
| 停止(停止の期間中に違反なし) | 処分を受ける前の違反(33条の2第3項3号) | 前歴1回(別表第三 備考一2) |
| 取消し(欠格期間中に違反なし) | 処分を受ける前の違反(同項2号) | 前歴1回(同 備考一1) |
たとえば累積6点で停止を受け、停止の期間を違反なく過ごした人が次に違反をしたとき、先の6点はもう累積に入りません。そのかわり前歴1回の欄で判断されるため、次は4点から停止の区分になります。点数そのものが残るのではなく、処分を受けたという事実が「前歴」として残るしくみです。
どちらの号も、処分の期間中に違反をしていないことを条件にしています。停止や欠格期間の最中に違反をすると、処分前の違反の点数は累積から外れず、前歴1回にも数えられないという、別の扱いになります。
よくある誤解
「前歴は処分を受けた日から3年で消える」は、起算点が違います。 条文が数えるのは「次の違反をした日」から過去3年以内の処分です。処分の日から3年が過ぎた後に違反をすれば、その処分は前歴になりません。そのうえで、通算1年の無違反があれば3年を待たずに数えられなくなります。
「違反者講習を受けると前歴がつく」わけではありません。 別表第三 備考一4は、累積点数が停止の区分に達したことを前歴に数える一方で、道路交通法102条の2の講習(違反者講習)を受けた場合を除いています。違反者講習の対象は、3点以下の軽微な違反で累積6点になり、その違反の時に前歴がないことなどの条件を満たす人です(施行令37条の8第2項)。講習を受けないまま期間が過ぎた場合は、停止などの処分の対象になります(道路交通法103条1項ただし書)。
「1年間無違反なら、何もかも元に戻る」とは言い切れません。 通算1年の無違反で数えられなくなるのは、その1年より前の前歴と違反の点数です(備考一ただし書・施行令33条の2第3項1号)。1年の間に取消しや停止を受けていないこと、停止されていた期間は1年に数えないことが条件です。また累積点数の合計に入らなくなることは、違反の記録そのものが消えることとは別です(違反点数はいつ消える?)。
前歴は刑事手続の記録を指す言葉ではありません。 別表第三の前歴は、行政処分の重さを決める区分として施行令が定義した言葉で、ここで数えるのは免許の停止・取消しなどの処分です。
前歴と関係する制度
- 違反者講習: 3点以下の軽微な違反で累積6点になった人のうち、前歴がないなどの条件を満たす人は、講習の通知を受けた日の翌日から通算1か月を超えるまでの間に講習を受けなければなりません(道路交通法102条の2・施行令37条の8)。受けた場合、通知の理由となった軽微な違反とそれより前の軽微な違反は累積点数から除かれ(施行令33条の2第3項7号)、前歴にも数えられません(別表第三 備考一4)。
- 免許取消歴等保有者: 過去に取消しなどを受けた人は、前歴とは別に「免許取消歴等保有者」として扱われ、前の処分の期間が満了した日から5年以内に再び取消しを受けると、欠格期間が長い区分になります(施行令33条の2第1項2号・38条6項3号)。詳しくは免許取消しと欠格期間で扱っています。
前歴の回数は、同じ違反でも処分の重さを大きく変えます。1年間の無違反が前歴を区切るしくみもあわせて、日ごろから安全運転を心がけてください。
見かけた取り締まりを共有して、みんなの注意喚起に。
よくある質問
累積点数に係る違反行為をした日を起算日として、過去3年以内に、違反を理由とする免許の取消しや効力の停止などの処分を受けたことをいいます(道路交通法施行令 別表第三 備考一)。処分を受けずに累積点数が停止や取消しの区分に達したことも、一定の条件で前歴に数えられます。
一般違反行為の場合、前歴がなければ6点から、1回なら4点から、2回なら2点から、3回以上なら2点から停止の区分に入ります。取消しの区分は、前歴なしで15点、1回で10点、2回で5点、3回以上で4点からです(道路交通法施行令 別表第三 一の表)。
前歴に数えるのは、次の違反をした日から過去3年以内の処分だけです。さらに、免許を受けていた期間(停止されていた期間を除く)が通算1年となり、その間に違反も処分もなければ、その1年より前の前歴は数えません(道路交通法施行令 別表第三 備考一ただし書)。
なりません。累積点数が停止の区分に達したことは原則として前歴に数えますが、違反者講習(道路交通法102条の2)を受けた場合は除かれています(道路交通法施行令 別表第三 備考一4)。講習の対象になるのは、3点以下の軽微な違反で累積6点になり、前歴がないなどの条件を満たす人です(同令37条の8)。
停止の期間中に違反をしなければ、処分を受ける前の違反の点数は、その後の累積点数に入りません(道路交通法施行令33条の2第3項3号)。その代わりに、停止を受けたことが前歴1回として数えられます(別表第三 備考一2)。
走行予定エリアを事前に確認し、「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりを回避する目的のものではありません。
都道府県別の取り締まりデータ
道路交通法違反の検挙件数(人口千人当たり・2023年度)は都道府県で差があります。全国平均は 36.1件。
47都道府県のランキングを見る本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。