交通違反で「時効は何年か」と言うとき、法令上の正体は刑事訴訟法の公訴時効です。公訴時効が完成すると、その事件は起訴できなくなります。年数は違反ごとに決まっているのではなく、その違反の罰則(法定刑)の重さを刑事訴訟法250条に当てはめて決まります。ここでは、道路交通法の罰則と刑事訴訟法の原文を突き合わせて整理します。
交通違反の公訴時効は多くが3年
刑事訴訟法250条2項は、人を死亡させた罪であって拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪について、法定刑の重さに応じた時効の期間を定めています。交通違反に関係するのは次の3つです。
- 長期10年未満の拘禁刑に当たる罪は5年(同項5号)
- 長期5年未満の拘禁刑または罰金に当たる罪は3年(同項6号)
- 拘留または科料に当たる罪は1年(同項7号)
道路交通法の罰則の多くは、上限が「3年以下の拘禁刑」までか、罰金だけです。このため、次の表のとおり、取締りでよく見る違反の公訴時効は3年になります。
拘禁刑と罰金のどちらかを科す罪や、両方を併せて科す罪は、重いほうの刑で期間を決めます(刑事訴訟法251条)。たとえば免許証の不携帯は「2万円以下の罰金又は科料」(道路交通法121条1項12号・95条1項)なので、科料の1年ではなく罰金の3年です。
ポイント:年数を決めるのは違反の種類ではなく、罰則の上限です。罰金か「5年未満の拘禁刑」なら3年、「5年以下の拘禁刑」なら5年です。
違反ごとの公訴時効
主な違反について、道路交通法の罰則と、刑事訴訟法250条2項に当てはめた公訴時効を並べます。
| 違反 | 罰則(道路交通法) | 公訴時効 |
|---|---|---|
| 最高速度違反(速度超過) | 6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金(118条1項1号) | 3年 |
| 携帯電話を保持しての通話・画面注視 | 6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金(118条1項4号) | 3年 |
| 信号無視 | 3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金(119条1項2号) | 3年 |
| 指定場所一時不停止 | 3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金(119条1項5号) | 3年 |
| 通行帯違反 | 5万円以下の罰金(120条1項3号) | 3年 |
| 免許証不携帯 | 2万円以下の罰金又は科料(121条1項12号) | 3年 |
| 酒気帯び運転 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(117条の2の2第1項3号) | 3年 |
| 無免許運転 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(117条の2の2第1項1号) | 3年 |
| 妨害運転(交通の危険を生じさせるおそれ) | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(117条の2の2第1項8号) | 3年 |
| 酒酔い運転 | 5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(117条の2第1項1号) | 5年 |
| 妨害運転(著しい交通の危険を生じさせた) | 5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(117条の2第1項4号) | 5年 |
※ 3年は刑事訴訟法250条2項6号、5年は同項5号。過失による速度超過(118条3項)・信号無視など(119条3項)も罰金または長期5年未満の拘禁刑なので3年。
刑法の規定で刑を重くしたり軽くしたりする場合でも、時効の期間は、加重・減軽する前の法定刑で決まります(刑事訴訟法252条)。
人身事故は別の法律の罪になる
運転上の注意を怠って人を死傷させた場合は、道路交通法ではなく自動車運転死傷処罰法5条の過失運転致死傷罪に当たり、罰則は「7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」です。刑事訴訟法250条に当てはめると、人を死亡させた場合は「人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるもの」として10年(同条1項3号)、負傷にとどまる場合は長期10年未満の拘禁刑に当たる罪として5年(同条2項5号)になります。
時効はいつから数え、いつ止まるか
起算点。 時効は、犯罪行為が終わった時から進行します(刑事訴訟法253条1項)。交通違反なら違反をした時点が起点で、告知を受けた日や、通知が届いた日から数えるのではありません。
公訴の提起で止まる。 起訴されると、その事件の時効は進行を止めます(同法254条1項)。
国外にいる間・逃げ隠れている間も止まる。 犯人が国外にいる場合は、その国外にいる期間、時効は進みません。犯人が逃げ隠れているため、起訴状の謄本の送達や略式命令の告知が有効にできなかった場合も、その期間は進みません(同法255条1項)。
反則金の手続きとの関係
青切符の対象になる反則行為も、道路交通法の罰則が定められた犯罪です。反則金の制度は、その犯罪について刑事手続に進む前に、反則金を納めれば終わりにできる道を用意したものです。
- 反則金を納付した人は、その行為について公訴を提起されず、家庭裁判所の審判にも付されません(道路交通法128条2項)。
- 反則者は、反則金の納付の通告を受け、かつ通告を受けた日の翌日から10日の納付期間が過ぎた後でなければ、公訴を提起されません(同法130条・128条1項)。
反則金を納めなかった場合に進むのが刑事手続で、その起訴に期限を付けているのが公訴時効です。反則金の納付期間(通告の翌日から10日)と公訴時効は、別の期間です。反則の手続きの流れは青切符・赤切符・白切符の違いと反則金の納付方法と期限で扱っています。
よくある誤解
「3年たてば違反点数も消える」 — 違反点数の累積を数える「過去3年」は、道路交通法施行令33条の2第3項が定める行政処分のためのしくみです。処分の理由となる違反の日を起算日にして過去3年以内の違反の点数を合計するもので、刑事訴訟法の公訴時効とは別の制度です。同じ「3年」でも、公訴時効の完成によって点数の扱いが変わるわけではありません。点数の数え方は違反点数はいつ消える?で確認できます。
「書面を受け取らなければ時効まで逃げ切れる」 — 刑事訴訟法255条1項は、逃げ隠れているため起訴状の謄本の送達や略式命令の告知ができなかった期間、時効の進行を止めると定めています。国外にいる期間も同じです。また道路交通法130条ただし書2号は、書面の受領を拒んだり居所が明らかでなかったりして告知や通告ができなかったときは、通告と納付期間の経過を待たずに公訴を提起できるとしています。
「罰金を言い渡されても、公訴時効と同じく3年で消える」 — 公訴時効は起訴できる期間で、刑が確定した後の時効は刑法の刑の時効という別の制度です。罰金の刑の時効は、刑の言渡しが確定した後、3年間その執行を受けないことで完成します(刑法32条5号)が、罰金の時効は執行行為をすることによって中断します(同法34条2項)。刑の言渡しを受けた人が国外にいる期間は進行しません(同法33条2項)。
時効の年数より大切なこと
公訴時効は、起訴できる期間に区切りを付ける制度で、ここまで見たとおり、国外にいる間や逃げ隠れている間は進みません。交通違反は、時効の年数にかかわらず、その場で事故につながりうる行為です。制限速度と信号を守り、飲酒をしたら運転しないことを徹底してください。
見かけた取り締まりを共有して、みんなの注意喚起に。
よくある質問
3年です。最高速度違反の罰則は「6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金」(道路交通法118条1項1号)で、長期5年未満の拘禁刑または罰金に当たる罪の公訴時効は3年と定められています(刑事訴訟法250条2項6号)。過失による速度超過(同法118条3項・3月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金)も3年です。
酒気帯び運転は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(道路交通法117条の2の2第1項3号)なので3年、酒に酔った状態での運転(酒酔い運転)は5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(同法117条の2第1項1号)なので5年です(刑事訴訟法250条2項5号・6号)。
犯罪行為が終わった時から進行します(刑事訴訟法253条1項)。交通違反なら、その違反をした時が起点です。告知や通告を受けた日、通知が届いた日から数えるのではありません。
公訴の提起(起訴)があると時効の進行は止まります(刑事訴訟法254条1項)。また、犯人が国外にいる期間と、逃げ隠れているため起訴状の謄本の送達や略式命令の告知ができなかった期間は、時効が進みません(同法255条1項)。
別のしくみです。公訴時効は刑事手続で起訴できる期間で、違反点数は行政処分のための制度です。点数の累積は、処分の理由となる違反と、その違反の日から過去3年以内の違反の点数を合計するもので(道路交通法施行令33条の2第3項)、公訴時効の完成とは結びついていません。
走行予定エリアを事前に確認し、「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりを回避する目的のものではありません。
都道府県別の取り締まりデータ
道路交通法違反の検挙件数(人口千人当たり・2023年度)は都道府県で差があります。全国平均は 36.1件。
47都道府県のランキングを見る本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。