オービス(速度違反自動取締装置)は、走行する車の速度を測り、一定の速度以上の車を自動で撮影して記録する装置です(警察庁「速度違反自動取締装置について」)。警察官がその場で車を止める取締りと違い、撮影された時点では何も起きません。ここでは、撮影のあとに何が起きるのかを順に整理します。
手続きの細部は都道府県警察によって違うことがあります。この記事では、撮影後の手続きを公式に案内している埼玉県警察の資料(2024年11月5日更新)を主な例にしています。通知書が手元にあるときは、その記載と連絡先を優先してください。
オービスに撮影されたあとの流れ
警察庁の資料は、オービスの特徴を「速度違反車両を現場に停止させることがない」と説明し、固定式の装置を「事後捜査」と位置づけています。そのため手続きは後日始まります。埼玉県警察の案内に沿うと、流れは次のとおりです。
- 撮影された車の所有者へ、通知書が郵送される
- 運転者が、通知書で指定された場所へ出頭する(出頭すると測定した速度を確認し、交通切符が作られる)
- 住居地を管轄する検察庁から出頭の要請があり、略式手続への同意などを確かめられる
- 住居地を管轄する公安委員会から呼び出しがあり、免許の停止・取消しの説明を受ける
3と4は「出頭後の一般的な手続」として赤切符の場合を示したものです。
警察が運転者に出頭を求める根拠は、刑事訴訟法198条1項です(埼玉県警察の案内にも明記されています)。同項は、捜査に必要なときは被疑者の出頭を求めて取り調べることができると定めています。国家公安委員会規則の犯罪捜査規範102条は、任意出頭を求める方法を「電話、呼出状の送付その他適当な方法」としています。通知が郵便だけとは限りません。
ポイント:通知書は車の所有者に届きますが、出頭を求められているのは運転者です。家族の車や会社の車を運転していたときも同じです。
通知はいつ届くのか
通知が届くまでの日数を定めた法令はありません。 刑事訴訟法198条は出頭を求められることを定めているだけで、期限を書いていません。埼玉県警察の案内と警視庁の案内にも、撮影から通知までの日数の記載はありません。
「1か月以内に届く」といった目安を見かけることがありますが、一次資料では確認できません。この記事では日数を示しません。
期限の話として法律にあるのは公訴時効です。速度超過の罪は6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金なので(道路交通法118条1項1号)、公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。時効は犯罪行為が終わった時から進みます(同法253条1項)。ただし時効は起訴できる期間の区切りで、通知の時期を決めるものではありません。詳しくは交通違反の時効で扱っています。
超過速度で手続きが分かれる
分かれ目は、超過した速度です。道路交通法の別表第二は、最高速度を30km/h(高速自動車国道等は40km/h)以上超える運転を反則行為から除いています。ここから先は反則金の手続きがなく、刑事手続になります。いわゆる赤切符です。
| 超過速度 | 一般道路 | 高速自動車国道等 |
|---|---|---|
| 15km/h未満 | 1点・反則金9,000円 | 同じ |
| 15km/h以上20km/h未満 | 1点・反則金12,000円 | 同じ |
| 20km/h以上25km/h未満 | 2点・反則金15,000円 | 同じ |
| 25km/h以上30km/h未満 | 3点・反則金18,000円 | 同じ |
| 30km/h以上35km/h未満 | 6点・刑事手続 | 3点・反則金25,000円 |
| 35km/h以上40km/h未満 | 6点・刑事手続 | 3点・反則金35,000円 |
| 40km/h以上50km/h未満 | 6点・刑事手続 | 6点・刑事手続 |
| 50km/h以上 | 12点・刑事手続 | 12点・刑事手続 |
※ 点数は道路交通法施行令 別表第二、反則金は同 別表第六の普通車の額です。ほかの車種の額は反則金一覧表を参照してください。
オービスが何km/h超過で撮影するかは、警察庁の資料では「一定の速度以上」とされ、数値は示されていません。埼玉県警察が示す「出頭後の一般的な手続」も赤切符の場合のものなので、この記事でも刑事手続に進む場合を中心に説明します。
超過が30km/h未満(高速自動車国道等は40km/h未満)で、無免許や事故などの除外事由がないときは、法令上は反則行為です。青切符との違いは青切符・赤切符・白切符の違いで整理しています。
出頭したあとは、刑事と行政が別々に進む
出頭の当日に結論が全部出るわけではありません。埼玉県警察は、警察では罰金の額は分からず、後日、住居地を管轄する検察庁から呼び出しがあると案内しています。免許の処分も別の手続きです。
刑事の手続き。 法定刑は6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金で、過失の場合は3月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金です(道路交通法118条1項1号・3項)。埼玉県警察の案内は、略式手続への同意を確かめたうえで、裁判所からの通知を経て罰金を納付する流れを示しています。
略式手続は、簡易裁判所が公判を開かずに100万円以下の罰金又は科料を科す手続です(刑事訴訟法461条)。検察官はあらかじめ手続を説明し、通常の裁判を受けられることを告げて、異議がないことを確かめます(同法461条の2)。略式命令を受けたあとも、告知を受けた日から14日以内なら正式裁判を請求できます(同法465条1項)。罰金は刑なので、反則金とは扱いが違います。違いは反則金と罰金の違いで説明しています。
東京の例では、警視庁が交通執行課の墨田分室・立川分室で、警察官の取調べ、検察官の取調べと略式命令の請求、裁判所の略式命令、罰金の納付の順に手続きが進むと案内しています。持ち物は交通切符告知票や出頭通知書(ハガキ)などのほか、印鑑と、運転免許証など顔写真付きの公的な身分証です。
行政の手続き。 免許の停止・取消しは、住所地を管轄する公安委員会が決めます(道路交通法103条1項)。埼玉県警察の案内では、出頭後2週間から2か月くらいで公安委員会から呼び出しがあるとされています。
前歴がない人の場合、6点で停止、12点でも停止の区分です。前歴が1回あると、10点以上は取消しの区分に入ります。それまでの累積点数があれば合算されます。詳しくは免許停止は何点からを参照してください。
免許を取り消そうとするときや、90日以上の停止をしようとするときなどは、公安委員会が意見の聴取を行います(道路交通法104条1項)。警視庁の基準では、前歴がなければ6〜8点が停止30日、12〜14点が停止90日です。停止の処分を受けたあとに講習を受けると、期間が短くなることがあります(停止処分者講習)。
ポイント:罰金を納めても点数は消えません。刑事の手続きと免許の処分は別物で、片方が終わってももう片方は続きます。
出頭しないとどうなるか
逮捕や勾留をされていない被疑者は、出頭を拒むことができ、出頭したあといつでも退去できます(刑事訴訟法198条1項ただし書)。出頭の求めそのものは強制ではありません。
一方で、裁判官の逮捕状による逮捕を定めた同法199条があります。埼玉県警察は、正当な理由がなく再三の呼び出しに応じない場合は強制捜査の手続きに移行する場合があると案内しています。運転者から連絡があっても、故意に出頭しない状況が認められる場合は同様で、「仕事が忙しい」は正当な理由とならない場合があるとしています。
犯罪捜査規範219条は、交通法令違反事件について、逃亡その他の特別の事情がある場合のほかは被疑者を逮捕しないようにしなければならないと定めています。逮捕されるかどうかは事案によるので、一概には言えません。都合がつかないときは、放置せず、通知書の連絡先へ問い合わせるのが案内どおりの対応です。
よくある誤解
「車の持ち主が処分される」 — 埼玉県警察の案内は、運転者に対して出頭を求めるとしています。速度超過の罰則の対象は、違反となるような行為をした人です(道路交通法118条1項1号)。
ただし会社などの使用者は、業務に関して最高速度違反を命じたり容認したりしてはいけません(同法75条1項2号)。違反すると別に罰則があります(同法118条2項3号)。
「家族が代わりに出頭すればよい」 — 別の人が運転者を名乗ることは手続きを解決しません。埼玉県警察は、車両所有者が故意に運転者を隠避した場合は罪に問われる可能性があると案内しています。刑法103条は、罰金以上の刑に当たる罪を犯した者を隠避させた者を3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処すると定めています。
「しばらく通知が来なければ、もう大丈夫」 — そう言える根拠になる一次資料は見当たりません。通知までの日数を定めた法令はありません。
「顔を勝手に撮られたので違法だ」 — 最高裁判所は昭和61年2月14日の判決で、自動速度監視装置による運転者の容ぼうの写真撮影は、現に犯罪が行われている場合になされ、緊急に証拠を保全する必要があり、方法も相当なものだとして、憲法13条に違反しないと判断しました。除外できない状況にある同乗者が写ることについても、憲法13条・21条に違反しないとしています。
「遠くの県の違反なら連絡は来ない」 — 埼玉県警察は、遠隔地に住む人には電話で相談するよう案内しています。住んでいる場所によって手続きの対象から外れるとは書かれていません。
通知書が届いたときの確認先
通知書についての問い合わせは、通知書に記載されている連絡先へ行います。埼玉県警察は、留守番電話に切り替わっても折り返すので、必ず連絡先を残すよう案内しています。測定された速度は電話では教えてもらえません。
速度の出し過ぎは、撮影の有無にかかわらず事故の被害を大きくします。標識の速度を基準に、余裕を持って走りましょう。
見かけた取り締まりを共有して、みんなの注意喚起に。
よくある質問
通知の時期を定めた法令はなく、埼玉県警察・警視庁の案内にも日数の記載はありません。「1か月以内」といった目安を見かけることがありますが、一次資料では確認できません。速度超過の公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。
埼玉県警察の案内では、撮影された車の自動車検査証またはナンバープレートに記載されている車両所有者へ郵送されます。運転者と所有者が違うときは、運転者が出頭するよう求めています。
逮捕されていない被疑者は出頭を拒むことができます(刑事訴訟法198条1項ただし書)。ただし埼玉県警察は、正当な理由がなく再三の呼び出しに応じない場合は強制捜査の手続きに移行する場合があると案内しています。「仕事が忙しい」は正当な理由とならない場合があるとしています。
埼玉県警察は、本人確認ができないため電話では一切回答していないと案内しています。出頭した人が運転者であれば測定した速度を確認してもらい、運転者でなければ教えないとしています。
埼玉県警察の案内では、当日すぐに免許停止処分になることはありません。処分については後日、公安委員会から呼び出しがあるとしています。出頭後2週間から2か月くらいかかるとの記載があります。
出頭先は通知書に記載されます。埼玉県警察は、関東圏内に住む人には指定した場所への出頭を求め、遠隔地に住む人や理由があって出頭が難しい人は電話で相談するよう案内しています。免許の処分をするのは、住所地を管轄する公安委員会です(道路交通法103条1項)。
超過が30km/h未満(高速自動車国道等は40km/h未満)なら、法令上は反則行為に当たります。オービスが何km/h超過で撮影するかは、警察庁の資料では「一定の速度以上」とされ、数値は示されていません。
走行予定エリアを事前に確認し、「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりを回避する目的のものではありません。
都道府県別の取り締まりデータ
道路交通法違反の検挙件数(人口千人当たり・2023年度)は都道府県で差があります。全国平均は 36.1件。
47都道府県のランキングを見る本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。