交通違反で払うお金には、反則金と罰金の2つがあります。名前は似ていますが、法律上の位置づけは別物です。ここでは、何が違うのか、前科はどちらでつくのかを、条文に沿って整理します。
反則金は刑罰ではなく、罰金は刑罰
反則金は、道路交通法125条3項が「反則者がこの章の規定の適用を受けようとする場合に国に納付すべき金銭」と定めるものです。警察庁は交通反則通告制度を、比較的軽微で定型的な違反について、行政上の手続として定額の反則金の納付を通告し、任意に納付されたら公訴を提起しない制度と説明しています。納付した人は、その事件について公訴を提起されず、家庭裁判所の審判にも付されません(同法128条2項)。
罰金は刑です。刑法9条は「死刑、拘禁刑、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする」と定めています。反則金はここに含まれません。
ポイント:分かれ目は、刑事裁判を通るかどうかです。反則金を納めれば裁判に進まず、罰金は裁判で科されます。
反則金と罰金の比較表
| 項目 | 反則金 | 罰金 |
|---|---|---|
| 性質 | 行政上の手続で納める金銭 | 刑(刑法9条) |
| 対象 | 反則者(道路交通法125条2項) | 起訴されて有罪となった人 |
| 額 | 種別と車種ごとの定額(施行令別表第六) | 1万円以上(刑法15条)。上限は法定刑。裁判所が決める |
| 納付 | 任意 | 裁判で命じられる |
| 納めないと | 刑事手続に進むことがある | 労役場留置(刑法18条) |
| 前科 | つかない | つく |
| 違反点数 | 別に付く | 別に付く |
反則金の上限は道路交通法の別表第二が定めており、実際の額は施行令別表第六で決まっています。別表第六の最高額は、大型車の40,000円です。違反ごとの額は反則金一覧表で確認できます。
同じ違反にも、反則金と罰金の両方が用意されている
反則行為は、道路交通法125条1項が「前章の罪に当たる行為のうち」別表第二に掲げるものと定めています。つまり信号無視や速度超過も、もともとは罰則のある犯罪にあたる行為です。反則金を納めれば、その刑事手続に進まずに終わる、というのが交通反則通告制度のしくみです。
| 違反 | 反則金(普通車) | 同じ行為の法定刑 |
|---|---|---|
| 信号無視(赤色等) | 9,000円 | 3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金(法119条1項2号) |
| 速度超過(25km/h以上30km/h未満) | 18,000円 | 6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金(法118条1項1号) |
| 携帯電話使用等(保持) | 18,000円 | 6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金(法118条1項4号) |
次のものは反則者に当たらないか、反則行為から外れるので、反則金の手続きになりません。
- 無免許運転・免許の停止中の運転(法125条2項1号)
- 酒酔い運転・麻薬等の運転、政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態での運転(アルコールの保有は自転車以外の軽車両を除く。同項2号)
- 反則行為をして交通事故を起こしたとき(同項3号)
- 16歳未満の人の違反(同項4号)
- 速度超過のうち、30km/h以上(高速自動車国道等は40km/h以上)の超過(別表第二)
このほか、居所や氏名が明らかでないときや、逃亡のおそれがあるときは、告知が行われません(法126条1項)。線引きの全体は青切符・赤切符・白切符の違いで整理しています。
前科は罰金でつき、反則金ではつかない
「前科」は、道路交通法・刑法・刑事訴訟法のどれにも出てこない語で、定義の条文はありません。警察庁の自転車ルールブック(令和7年9月)は、前科を「過去に刑事裁判で有罪判決を受けた経歴」と説明しています。
同じ資料は、反則金を納付すれば取調べや裁判のために出頭する必要がなくなり、有罪となって「いわゆる「前科」」がつくこともないと述べています。一方、起訴されて裁判所で有罪となると、罰金を納付するなどする必要があり、前科がつくとしています。
ポイント:前科がつくのは、払ったお金の額によってではありません。有罪の裁判を受けたかどうかで決まります。
よくある誤解
「略式の罰金なら前科にならない」は誤りです。 略式手続は、簡易裁判所が公判を開かずに100万円以下の罰金又は科料を科す手続です(刑事訴訟法461条)。略式命令は、正式裁判を請求できる14日の期間(同法465条1項)が過ぎれば、確定判決と同一の効力を生じます(同法470条)。犯罪捜査規範178条も、被疑者供述調書に書く前科の内容として「罰金又は科料の金額」を挙げています。
「赤切符を切られた時点で前科がつく」も誤りです。 赤切符は、警察庁の資料によれば正式には「道路交通法違反事件迅速処理のための共用書式」で、簡易な形式の捜査書類です。起訴するかどうかは検察官が判断します。
「反則金を払えば違反点数も付かない」も誤りです。 納付の効果は、公訴を提起されないことと、家庭裁判所の審判に付されないことです(道路交通法128条2項)。点数は別の手続で付き、累積すれば行政処分の対象になります。関係は行政処分と刑事処分の違いで扱っています。
「前科があると、どの資格も失う」とは限りません。 影響は資格ごとの法律で違います。たとえば医師法4条3号は、罰金以上の刑に処せられた者には「免許を与えないことがある」と定めています。国家公務員法38条1号が欠格としているのは、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者です。自分の資格への影響は、その資格の法律で確認する必要があります。
「前科は記録ごと5年で消える」とは条文に書かれていません。 罰金の執行を終えた人が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過すると、刑の言渡しは効力を失います(刑法34条の2第1項)。条文が定めているのはこの効力までです。
それぞれの手続きの流れ
反則金の流れ。 警察官から告知を受けると、翌日から7日以内に仮納付ができます(道路交通法129条1項)。仮納付をしなければ通告があり、通告を受けた日の翌日から10日以内に納付します(同法128条1項)。期限と納付方法の詳細は反則金の納付方法と期限にまとめています。納付期間が過ぎると公訴の提起ができるようになり(同法130条)、本来の刑事手続が進みます。警察庁のルールブックは、反則行為の成否を争うときも刑事手続で処理されるとしています。
罰金の流れ。 事件が検察官に送られ、検察官が起訴・不起訴を判断します。略式手続による場合、検察官はあらかじめ手続を説明し、通常の裁判を受けられることを告げたうえで、異議がないことを確かめます。異議がないときは、被疑者が書面でその旨を明らかにします(刑事訴訟法461条の2)。略式命令を受けても、告知を受けた日から14日以内なら正式裁判を請求できます(同法465条1項)。
罰金には執行猶予が付くこともあります。50万円以下の罰金の言渡しで、前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがないなどの条件を満たすときです(刑法25条1項)。
払えないとき。 罰金を完納できない人は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置されます(刑法18条1項)。裁判が確定した後30日以内は、本人の承諾がなければ留置を執行できません(同条5項)。罰金の裁判は検察官の命令で執行され、その命令は執行力のある債務名義と同一の効力を持ちます(刑事訴訟法490条1項)。
一方、反則金について、道路交通法の第9章(125条以下)に督促や滞納処分の定めはありません。この点は、督促や延滞金の定めがある放置違反金(同法51条の4第13項)とも違います。
納めた反則金の行き先
反則金は国に納付します(道路交通法128条1項)。同法の附則16条は、国が当分の間、道路交通安全施設の設置及び管理に要する費用に充てるため、都道府県と市町村に交通安全対策特別交付金を交付すると定めています。交付金の額は、反則金の収入額などから、仮納付の返還金や通告書の送付費用に相当する額などを差し引いて決まります(同条2項)。
16歳以上の自転車の反則行為も、2026年4月1日から交通反則通告制度の対象になっています。どの乗り物でも、反則金か罰金かを考える前に、信号と速度を守り、周りを確かめて運転することが、自分と周りの人を守ることにつながります。
見かけた取り締まりを共有して、みんなの注意喚起に。
よくある質問
つきません。反則金を納付した人は、その事件について公訴を提起されず、家庭裁判所の審判にも付されません(道路交通法128条2項)。裁判を受けないので有罪にならず、警察庁の自転車ルールブックも、反則金を納付すれば「いわゆる「前科」」がつくことはないと説明しています。
つきます。罰金は刑法9条が定める刑で、裁判で有罪となったときに科されます。略式命令で科された罰金も、確定すれば確定判決と同じ効力を持ちます(刑事訴訟法470条)。
比べ方によります。反則金は違反の種別と車種ごとの定額で、施行令別表第六の最高額は40,000円です。罰金は刑法15条で1万円以上とされ、上限は違反ごとの法定刑で決まります。たとえば酒気帯び運転の法定刑は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。実際の額は裁判所が決めます。
完納できない人は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置されます(刑法18条1項)。留置の期間は判決などで刑とあわせて言い渡されます(同条4項)。裁判が確定してから30日以内は、本人の承諾がなければ留置を執行できません(同条5項)。
納付期間が過ぎると公訴の提起ができるようになり(道路交通法130条)、本来の刑事手続が進みます。反則金の納付は任意で、道路交通法の第9章に督促や滞納処分の定めはありません。起訴されて有罪となれば、罰金などの刑を受けることになります。
必ずではありません。赤切符は警察庁の資料によれば簡易な形式の捜査書類で、それ自体は刑ではありません。検察官が起訴・不起訴を判断し、起訴されて有罪となったときに前科がつきます。
罰金の執行を終えた人が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過すると、刑の言渡しは効力を失います(刑法34条の2第1項)。ただし条文が定めているのは刑の言渡しの効力で、経歴の記録がどう扱われるかまでは書かれていません。
走行予定エリアを事前に確認し、「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりを回避する目的のものではありません。
都道府県別の取り締まりデータ
道路交通法違反の検挙件数(人口千人当たり・2023年度)は都道府県で差があります。全国平均は 36.1件。
47都道府県のランキングを見る本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。