車を離れている間に駐車違反の標章を取り付けられると、その後の手続きは2つに分かれます。運転者が警察に出頭して反則金を納めるか、出頭しないまま車の使用者に放置違反金の納付が命じられるかです。ここでは、2つの違いと、放置違反金を払わなかったときに何が起きるかを、道路交通法と道路交通法施行令の原文で確認して整理します。
放置違反金は「使用者」、反則金は「運転者」が納める
放置違反金。 警察署長は、違法駐車と認められる車両で、運転者が離れて直ちに運転することができない状態にあるもの(放置車両)を警察官等に確認させ、標章を取り付けさせることができます(道路交通法51条の4第1項)。公安委員会は、その車両を放置車両と認めるときは、車両の使用者に対して放置違反金の納付を命ずることができます(同条4項)。納められた放置違反金は、その公安委員会が置かれている都道府県の収入になります(同条15項)。
反則金。 反則行為をした運転者(反則者)が、交通反則通告制度の適用を受けようとする場合に国に納付する金銭です(同法125条3項)。納付した人は、その行為について公訴を提起されず、家庭裁判所の審判にも付されません(同法128条2項)。
2つをつなぐのが、51条の4第4項のただし書です。標章が取り付けられた日の翌日から起算して30日以内に、違法駐車行為をした運転者が反則金を納付した場合や、その事件について公訴を提起されたり家庭裁判所の審判に付されたりした場合は、使用者に納付命令は出されません。
ポイント:標章を付けられた駐車違反は、運転者が出頭すれば反則金(運転者の責任)、出頭しなければ放置違反金(使用者の責任)という二本立てです。
警察庁交通局の資料「駐車対策の現状」も、この流れを「運転者出頭→反則告知(運転者責任の追及)」「運転者未出頭→弁明の機会付与→放置違反金納付命令(使用者責任の追及)」と図で示しています。
放置違反金と反則金の比較
| 項目 | 放置違反金 | 反則金 |
|---|---|---|
| 納める人 | 車両の使用者(法51条の4第4項) | 反則行為をした運転者(法125条3項) |
| 命じる・通告する者 | 公安委員会(納付命令) | 警察本部長(通告) |
| 納め先 | 都道府県の収入(法51条の4第15項) | 国(法125条3項・128条1項) |
| 額の根拠 | 施行令17条の3・別表第一 | 施行令45条・別表第六 |
| 事前の手続き | 弁明書と証拠を出す機会(法51条の4第6項) | 告知・通告(法126条・127条) |
| 違反点数 | 使用者に命じる金銭で、点数とは別の手続 | 運転者の違反行為に点数が付く(施行令 別表第二) |
| 払わないとき | 督促・延滞金・滞納処分・車検拒否(法51条の4第13項・14項・51条の7) | 公訴を提起される余地が生まれる(法130条) |
※ 放置違反金の納付命令は、放置違反金の額と納付の期限・場所を書いた文書で行われます(法51条の4第5項)。
条文は「使用者」と書き、所有者とは別の語として使い分けています(法51条の5第1項は、標章を取り付けられた車両の「使用者、所有者その他の関係者」に報告を求められると定めています)。
放置違反金の額(施行令 別表第一)
放置違反金の額は、法律(道路交通法 別表第一)が上限を決め、その範囲内で政令が定めます(法51条の4第8項・施行令17条の3)。施行令 別表第一の額は次のとおりです。
| 放置車両の態様の区分 | 大型車 | 普通車 | 二輪車・原付車 |
|---|---|---|---|
| 一 駐停車禁止場所等(高齢運転者等専用場所等) | 27,000円 | 20,000円 | 12,000円 |
| 二 駐停車禁止場所等(一以外) | 25,000円 | 18,000円 | 10,000円 |
| 三 駐車禁止場所等(高齢運転者等専用場所等) | 23,000円 | 17,000円 | 11,000円 |
| 四 駐車禁止場所等(三以外) | 21,000円 | 15,000円 | 9,000円 |
| 五 時間制限駐車区間の違反 | 12,000円 | 10,000円 | 6,000円 |
※ 区分の見出しは、別表第一の各項(条番号で書かれている)を要約したもの。大型車は大型・中型・準中型・大型特殊自動車と重被牽引車、二輪車は大型・普通自動二輪車、原付車は小型特殊自動車と原動機付自転車(施行令 別表第一 備考二)。
一〜四の額は、施行令 別表第六の反則金のうち「放置駐車違反」の4区分(駐停車禁止場所等・駐車禁止場所等のそれぞれについて、高齢運転者等専用場所等とそれ以外)と同じです。警察庁の資料「駐車対策の現状」も「放置違反金の額と反則金の額は同額」と明記しています。五の時間制限駐車区間での違反は、別表第六では放置駐車違反ではなく「駐停車違反(駐車禁止場所等)」の区分に入ります(施行令 別表第二 備考二86)。
「高齢運転者等専用場所」は、道路標識等により高齢運転者等標章自動車が停車・駐車できるとされている道路の部分です(施行令 別表第一 一の項)。
よくある誤解
「放置違反金を払えば、反則金を払ったのと同じ」 — 額は同じでも、納める人と納め先が違います。反則金は反則者が国に納める金銭で、納めると公訴を提起されない効果があります(法125条3項・128条2項)。放置違反金は使用者に命じられ、都道府県の収入になります(法51条の4第4項・15項)。
「自転車を放置しても放置違反金が来る」 — 51条の4第1項は、対象の車両のうち軽車両を「重被牽引車」(牽引されるための構造・装置を持ち、車両総重量が750kgを超えるもの)に限っています。自転車は放置違反金の対象から外れます。ただし、駐停車を禁止する44条・45条は「車両は」で始まり自転車も含むので、違反にならないという意味ではありません。
「放置違反金は放っておけば、そのうち立ち消えになる」 — 督促を受けて期限までに納めないと、地方税の滞納処分の例により強制的に徴収されます(法51条の4第14項)。車検のときに納付を証する書面を示す必要も生じます(法51条の7)。警察庁の資料によると、令和6年中に放置違反金の滞納処分が9,152件(徴収件数)、車検拒否が9,072件ありました。
納付命令までの流れと、払わなかったとき
標章の取付けから納付命令まで。 警察署長は標章を取り付けさせたとき、その車両の駐車の状況を公安委員会に報告します(法51条の4第3項)。公安委員会は納付命令の前に、命令の原因となる事実と弁明書の提出先・提出期限を書面で使用者に通知し、弁明書と有利な証拠を出す機会を与えなければなりません(同条6項)。この通知を受けた人は、弁明書の提出期限までに放置違反金に相当する金額を仮納付することができ、その後に納付命令があれば、仮納付が放置違反金の納付とみなされます(同条9項・11項)。仮納付は分割できません(施行令17条の4)。
納付命令の後に運転者が出頭したとき。 納付命令の後でも、違法駐車行為をした運転者が反則金を納付したり、その事件で公訴を提起されるなどしたりしたときは、公安委員会は納付命令を取り消さなければなりません。すでに放置違反金を納めていれば、その金額は還付されます(法51条の4第16項・17項)。
払わなかったとき。 次の順に進みます。
- 納付の期限を過ぎると、督促状で期限を指定して督促される。放置違反金について年14.5%の割合で計算した額の範囲内の延滞金と、督促に要した手数料を徴収されることがある(法51条の4第13項)
- 督促の期限までに納めないと、地方税の滞納処分の例により徴収される(同条14項)
- 督促を受けた自動車は、車検の際に放置違反金等を納付した(徴収された)ことを証する書面を示さないと、自動車検査証を返してもらえない(法51条の7)。督促をしたことは国家公安委員会を通じて国土交通大臣等に通知される(法51条の6第2項)
納付命令を繰り返し受けたとき。 標章を取り付けられた日より前6か月以内に同じ車両で納付命令を受けていたなど、政令の基準に当たる使用者には、公安委員会が期間を定めてその車両の運転を禁止する命令(車両の使用制限命令)を出すことがあります(法75条の2第2項)。基準は施行令26条の8にあります。標章を取り付けられた日より前6か月以内に同じ車両で受けた納付命令が3回以上あると対象になり、過去1年以内に使用制限などの命令を受けていれば2回以上(2回以上受けていれば1回以上)に下がります。禁止の期間の上限は、大型・中型・準中型・大型特殊自動車と重被牽引車が3か月、普通自動車が2か月、自動二輪車・小型特殊自動車・原動機付自転車が1か月です。警察庁の資料によると、令和6年中の車両の使用制限命令は1,502件でした。
同じ資料によれば、令和6年中の放置車両確認標章の取付件数は77万97件で、そのうち駐車監視員によるものが48万8,656件でした。放置車両の確認は、公安委員会の登録を受けた法人に委託することができ(法51条の8第1項)、委託を受けた法人の駐車監視員が標章を取り付けることもあります。
違反ごとの反則金の額は反則金一覧表に、反則金の期限と納め方は反則金の納付方法と期限にまとめています。駐停車が禁止される場所は駐停車違反とはを参照してください。
駐車違反は、停めた時間の長さより「どこに停めたか」で決まります。放置された車は見通しを妨げ、衝突事故の原因にもなります。停める前に標識と場所を確かめ、駐車場を使うようにしましょう。
見かけた取り締まりを共有して、みんなの注意喚起に。
よくある質問
なりません。運転者が標章の取付けの翌日から30日以内に反則金を納付した場合や、起訴されるなどした場合は、使用者に放置違反金の納付命令は出されません(道路交通法51条の4第4項ただし書)。納付命令の後に運転者が反則金を納付した場合なども、公安委員会は納付命令を取り消し、納付済みの放置違反金は還付されます(同条16項・17項)。
違反点数は、運転者がした違反行為に付けるものです(道路交通法施行令 別表第二。放置駐車違反は駐停車禁止場所等で3点、駐車禁止場所等で2点)。放置違反金は違反行為をした者ではなく車の使用者に命じられる金銭で、点数とは別の手続です。警察庁の資料も、運転免許の停止等を運転者側の措置、車両の使用制限を使用者側の措置として分けて示しています。
納付の期限を過ぎると督促状で督促され、年14.5%の割合で計算した額の範囲内の延滞金と督促手数料を徴収されることがあります(道路交通法51条の4第13項)。督促の期限までに納めないと、地方税の滞納処分の例により徴収されます(同条14項)。督促を受けた自動車は、納付を証する書面を示さないと車検で自動車検査証を返してもらえません(同法51条の7)。
放置違反金の対象となる車両のうち、軽車両は重被牽引車(牽引されるための構造・装置を持ち、車両総重量750kg超のもの)に限られています(道路交通法51条の4第1項の括弧書き)。自転車はこの対象から外れます。ただし、駐停車の禁止(同法44条・45条)は車両一般に及ぶので、駐車違反にならないという意味ではありません。
納付の場所は納付命令の文書に記載されます(道路交通法51条の4第5項)。令和8年度の国家公安委員会・警察庁交通安全業務計画は、知事部局と連携するなどして、放置違反金のコンビニ納付やスマートフォン決済アプリによる納付を導入するなど納付方法の拡大に取り組むとしています。使える方法は、手元の納付命令の文書で確認してください。
走行予定エリアを事前に確認し、「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりを回避する目的のものではありません。
都道府県別の取り締まりデータ
道路交通法違反の検挙件数(人口千人当たり・2023年度)は都道府県で差があります。全国平均は 36.1件。
47都道府県のランキングを見る本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。