追越し違反違反の種類

追越し違反とは?追い抜きとの違い・禁止場所と反則金・違反点数

「追越し」と「追い抜き」は、法律上まったく別の扱いです。違いは進路を変えるかどうか。追越し違反の内容と追い越してはいけない場所、反則金・点数の目安を整理します。

取り締まりマップ編集部安全運転支援チーム
公開:2026.07.179分で読めます
前を走る車を追い越している車と、マスコットのトラくんを描いたイラスト

追越し違反は、追越しについて定めた道路交通法第28条から第30条までに対する違反です。ひとくちに追越し違反といっても、条文は追越しの「方法」「場合」「場所」の3つに分かれていて、切符の上では同じ名前でも中身は同じではありません。ここでは法律上の「追越し」が何を指すのかと、追い越してはいけない場所、反則金・点数の目安を整理します。

追越し違反とは

道路交通法は、追越しについて3つの条文を置いています。交通反則通告制度上の反則行為名「追越し違反」が指すのは、この第28条から第30条までに違反した場合です。それぞれが扱う場面は次のとおりです。

  • 第28条(方法) — どのように追い越すか、追越しの方法を定めています。
  • 第29条(場合) — 「後車は、前車が他の自動車又はトロリーバスを追い越そうとしているときは、追越しを始めてはならない」とされています。前の車が追越しにかかっているところへ後ろの車が追越しを始める、いわゆる二重追越しの禁止です。
  • 第30条(場所) — 追越しを禁止する場所を定めています。道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分のほか、見通しのきかない場所や交差点付近などが挙げられています。詳しくは後の節で見ます。

「方法」「場合」「場所」と並べると細かく見えますが、どの条文に当たるかで扱いが変わることがあります。うっかりでも罰金の対象になりうるのは、このうちひとつだけです。

ポイント:法律上の「追越し」は進路を変えて前方に出ることを指し、進路を変えずに前に出る「追い抜き」は追越し違反には当たりません。ただし横断歩道の手前30メートルのように、追い抜きも別に禁止されている場所があります。

反則金・違反点数の目安

追越し違反に対する反則金・違反点数の目安は次のとおりです。

車種反則金違反点数
大型車12,000円2点
普通車9,000円2点
二輪車7,000円2点
原付6,000円2点

※ 金額・点数は一例です。反則金は交通反則通告制度に基づくもので、違反の態様や最新の法令により異なります。この違反には刑事罰として3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金も定められており、追越しを禁止する場所での違反は過失(うっかり)による場合も罰金の対象となることがあります。「拘禁刑」は2025年6月に懲役・禁錮を一本化した刑です。詳細は必ず公式情報をご確認ください。

ほかの違反の反則金や点数は、交通違反の反則金一覧交通違反の点数一覧にまとめています。

追越しと追い抜きは何が違うか

道路交通法は第2条第1項第21号で「追越し」を定義しています。車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう、というものです。

進路を変えて前の車の側方を通過し前方に出る追越しと、進路を変えずに前方に出る追い抜きを2列に並べて対比した図
図:追越しと追い抜きの違い

要件は2つあります。「その進路を変えて」側方を通過すること、そして「前方に出る」ことです。進路を変えずにそのまま前方に出る行為は、この定義に当てはまりません。これが俗に「追い抜き」と呼ばれるもので、定義上の追越しではない以上、追越し違反という反則行為にも当たらないことになります。

もっとも「追い抜き」という言葉そのものは、道路交通法にも施行令にも出てきません。定義も罰則も置かれていない、説明のための通称です。

だからといって「追い抜きなら自由」ということにはなりません。追い抜き自体を罰する条文はないとされていますが、追い抜きが名指しで禁止される場面は別に定められています。たとえば横断歩道や自転車横断帯とその手前30メートル以内では、第38条第3項により、前方を進行している他の車両等(特定小型原動機付自転車等を除く。)の側方を通過してその前方に出ることが禁止されています。この項は「第三十条第三号の規定に該当する場合のほか」と書き出しており、進路を変えて前に出る追越しは第30条第3号が、進路を変えない追い抜きはこの項が受け持つ形になっています。結果として、この場所では追越しも追い抜きもできないことになります。括弧書きで除かれる「特定小型原動機付自転車等」は、特定小型原動機付自転車及び軽車両をまとめて指す法律上の定義語で(第18条第1項)、自転車や電動キックボードがこれに当たります。これらを追い抜くことはこの項の対象には入りませんが、前を走る車を追い抜くことは禁止されていることになります。追越しの定義から外れることと、どこでしてもよいこととは別の話です。

追い越してはいけない場所

第30条は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分のほか、次の場所での追越しを禁止しています。ただし条文が禁じているのは、「他の車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過」することです。この除外は、道路標識等による禁止の部分も含め、第30条が禁止する追越しの全体に働きます。追い越される側から自転車や電動キックボードが除かれているため、第30条が挙げる場所であっても、自転車などを追い越すこと自体は同条が禁止する行為には当たらないことになります。

見通しのきかない場所

道路の曲がり角付近、上り坂の頂上付近、勾配の急な下り坂では、他の車両を追い越すために進路を変更したり、前車の側方を通過したりしてはならないとされています。

トンネル

トンネルも禁止場所とされています。ただし車両通行帯の設けられた道路にあるトンネルは除かれます。

交差点・踏切・横断歩道と手前30m

交差点、踏切、横断歩道、自転車横断帯と、これらの手前の側端から前に30メートル以内の部分が禁止場所とされています。ただし優先道路を通行している場合の、その優先道路にある交差点は除かれます。

ここで混同されやすいのが、中央に引かれた黄色の線です。黄色の実線は「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」を表す規制標示で、追越しのために右側部分へはみ出すことを禁止するものです。はみ出さずに追い越すこと、たとえば片側2車線の道路で隣の車線を使って追い越すことまでを禁じるものではないとされています。そもそも「追越し禁止」を表す道路標示は存在しません。追越しそのものを禁止するのは第30条で、そのうち道路標識等による禁止を道路上で示すのは「追越し禁止」の規制標識のほうです。

紛らわしいことに、標識にも「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」と「追越し禁止」の2つがあります。前者ははみ出しを禁じるもの、後者は追越しそのものを禁じるもので、名前は似ていますが別の標識です。

なお、追越しのために右側部分へはみ出せるかどうかを決めているのは、追越しの条文ではなく通行区分の条文(第17条第5項第4号)のほうです。はみ出しての追越しが認められるのは、左側部分の幅員が6メートルに満たない道路で、右側部分を見とおすことができ、かつ反対方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限られ、道路標識等によりはみ出し通行が禁止されている場合は除かれます。追越しが禁止されていない場所であっても、はみ出してよいとは限りません。

統計の上では、追越しによる死亡事故は多くありません。法令違反別に見ると、令和6年中に一般原付以上の運転者が第1当事者となった死亡事故2,325件のうち、追越しによるものは10件でした。事故の類型別に見ると、全死亡事故2,598件を母数とする別の統計で「追越追抜時」が15件となっており、前年の25件から40.0%減っています。母数も分類の切り口も異なる数字です。

ただし、件数の少なさをそのまま「追越しは安全」と読むことはできません。いずれも母数は死亡事故で、追越しがどれだけ行われているかは含まれていないためです。減少の理由も、資料からは分かりません。追い越せるかどうか迷うような場所は、第30条が名指しで禁止している場所かもしれません。迷ったら追い越さない、と考えておくのが安全です。

同じ「追越し違反」でも中身が違う

切符の上では同じ「追越し違反」で、反則金も違反点数も、刑事罰として定められている3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金も変わりません。ただし根拠となる条文が3つに分かれている以上、中身まで同じというわけではありません。

違いが出るのは、まず過失犯の扱いです。追越しを禁止する場所での違反(第30条)は、過失による場合、つまり「うっかり」でも罰金の対象となることがあるとされています。追越しの方法(第28条)と追越しを禁止する場合(第29条)の違反には、この定めがありません。追越し禁止の場所だと気づかずに追い越してしまった場合と、追越しの方法を誤った場合とで、扱いが変わることになります。

注意したいのは、これが第30条に限った話だという点です。「追越し違反はうっかりでも罰金の対象になる」と一般化することはできません。

もうひとつは妨害運転罪との関係です。追越しの方法を定めた第28条のうち、第1項又は第4項に違反する行為は、妨害運転(あおり運転)の罪の類型のひとつに挙げられています(第117条の2の2第1項第8号ヘ)。他の車両等の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法で行われた場合の話です。一方、追越しを禁止する場所での違反(第30条)は、妨害する目的があったとしてもこの類型には入りません。同じ追越しでも、どう追い越したかを定める条文と、どこで追い越したかを定める条文とで、扱いが分かれています。

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よくある質問

道路交通法は「追越し」を、他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えて側方を通過し、かつ前方に出ることと定義しています。つまり進路を変えることが要件です。進路を変えずに前方に出る、いわゆる「追い抜き」は、この定義に当てはまらないため追越し違反には当たりません。なお「追い抜き」という言葉は道路交通法には出てきません。

そうとは限りません。横断歩道や自転車横断帯とその手前30メートル以内では、前を進む自動車の側方を通過して前に出ることが第38条第3項で禁止されています。同じ場所での追越しは第30条第3号が禁止しており、この項が受け持つのは進路を変えない追い抜きのほうです。

中央に引かれた黄色の線は「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」を表す道路標示で、追越しのために右側部分へはみ出すことを禁止するものです。はみ出さずに追い越すこと自体を禁じるものではないとされています。追越しそのものが禁止される場所は道路交通法第30条に定められています。同条は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分と、道路の曲がり角付近などの場所とを並べて挙げており、後者は標識の有無にかかわらず禁止の対象とされています。

走行予定エリアを事前に確認し、見通しの悪い場所での「無理に追い越さない」という意識づけにご活用ください。取り締まりの回避を目的としたものではありません。

本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。