免許を受けて間もない人は、違反の点数が少なくても、免許停止とは別の仕組みで免許を失うことがあります。道路交通法100条の2が定める「初心運転者期間」と「再試験」です。どんな違反で再試験の対象になり、どうすれば避けられ、受けないとどうなるのかを、道路交通法と同法施行令・施行規則の原文で確認します。
初心運転者期間に3点以上で再試験の対象になる
道路交通法100条の2第1項は、準中型・普通・大型二輪・普通二輪・原付の免許を受けた人について、次の期間を「初心運転者期間」と定めています。
- 免許を受けた日から、その免許を受けていた期間が通算して1年に達する日まで。 免許の効力が停止されていた期間は除かれます。停止を受けると、その日数だけ初心運転者期間の終わりが後ろにずれます。
この期間に、その免許で運転できる車の運転について違反をし、それが政令で定める基準に該当した人を「基準該当初心運転者」と呼び、公安委員会は運転の能力を現に有するかどうかを確かめる試験(再試験)を行います(同項)。
基準該当初心運転者には、もう1つ道があります。初心運転者講習を受けて終えれば、再試験を受けなくてよくなります(同項4号)。講習を受けず、再試験にも合格しなければ、免許は取り消されます(104条の2の2)。
ポイント:免許を受けて通算1年の間に違反点数の合計が3点以上になると再試験の対象になり、初心運転者講習を受けなければ再試験を受けることになります。
再試験の対象になる点数の基準
基準は施行令36条にあります。点数は、その免許で運転できる車の運転でした違反に、施行令別表第二で付される点数を合計したものです。
| 基準 | 根拠 |
|---|---|
| 違反の点数の合計が3点以上になり、その違反の前の合計が2点以下(または前に違反が無い)であること。ただし、3点の違反1回だけで3点になった場合は除く | 施行令36条1号 |
| 違反の点数の合計が4点以上になり、それより前の違反が1回だけで、その違反が3点だったこと | 施行令36条2号 |
具体的に当てはめると、次のようになります(点数は施行令別表第二による)。
| 初心運転者期間中の違反 | 合計 | 再試験の対象か |
|---|---|---|
| 速度超過(20未満)1点 → 指定場所一時不停止等 2点 | 3点 | 対象になる(36条1号) |
| 信号無視 2点 → 指定場所一時不停止等 2点 | 4点 | 対象になる(36条1号) |
| 携帯電話使用等(保持)3点 の1回だけ | 3点 | 対象にならない(36条1号の括弧書き) |
| 携帯電話使用等(保持)3点 → 速度超過(20未満)1点 | 4点 | 対象になる(36条2号) |
| 4点以上の違反1回 | 4点以上 | 対象になる(36条1号) |
対象になる免許・ならない人
再試験の対象になるのは、準中型・普通・大型二輪・普通二輪・原付の5種類の免許です(100条の2第1項)。大型・中型・第二種などの免許は挙げられていません。
同項のただし書きは、次の人を再試験の対象から除いています。
| 対象から除かれる人 | 根拠 |
|---|---|
| その免許を受けた日前6か月以内に、その免許の上位免許(その免許で運転できる車を運転できる他の種類の免許)を受けていたことがある人 | 100条の2第1項1号 |
| その免許を受けた日前6か月以内に同じ種類の免許を受けていたことがあり、その期間が通算1年以上の人(再試験で取り消された免許などは数えない) | 同項2号 |
| その免許を受けた日以後に、上位免許を受けた人 | 同項3号 |
| 初心運転者講習を終えた人(講習の後に、もう一度基準に該当した人を除く) | 同項4号 |
| 準中型免許で、普通免許を現に受けていて、その普通免許を受けていた期間が通算2年以上の人 | 同項5号 |
初心運転者講習を受ければ再試験は免除される
基準に該当すると、公安委員会は速やかに、初心運転者講習を受けられることを書面で通知します(108条の3第1項)。講習を受けられるのは、通知を受けた日の翌日から通算して1か月を超えるまでの間に限られます(同条2項)。この講習は、道路交通法108条の2第1項10号に定められていて、免許の効力が停止されている人は対象から除かれています(同号の括弧書き)。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 受け方 | 対象になる人からの申出により行う | 施行規則38条10項1号 |
| 内容 | 運転者としての資質の向上、運転について必要な技能と知識 | 同項2号 |
| 方法 | 道路での運転の実習などの実技訓練を含む | 同項4号 |
| 講習時間 | 7時間(原付免許は4時間) | 同項5号 |
講習を終えると、再試験を受けなくてよくなります(100条の2第1項4号)。ただし、講習を終えた後、初心運転者期間が終わるまでの違反で、施行令36条と同じ点数の基準にもう一度該当すると、再試験の対象に戻ります(同号の括弧書き・施行令37条の3)。このときの点数は、講習を終えた後の違反だけで数えます。
手数料。 講習の手数料は都道府県の条例で決まり、政令が標準になる額を定めています(道路交通法112条1項・施行令43条1項)。標準額は次のとおりです。
| 免許の種類 | 1時間あたりの標準額 | 講習全体 |
|---|---|---|
| 準中型免許 | 2,300円 | 16,100円(7時間) |
| 普通免許 | 2,150円 | 15,050円(7時間) |
| 大型二輪免許 | 2,850円 | 19,950円(7時間) |
| 普通二輪免許 | 2,700円 | 18,900円(7時間) |
| 原付免許 | 2,550円 | 10,200円(4時間) |
※ 施行令43条1項の表の「物件費及び施設費に対応する額」と「人件費に対応する額」(1時間1,600円)の合計。実際の額は住所地の都道府県警察の案内で確認してください。
再試験の通知・受験・不合格
講習を受けなかった人に対する再試験は、次の流れで進みます。
- 初心運転者期間が終わった後に通知が来る。 公安委員会は、初心運転者期間が経過した後速やかに、再試験を行う旨とその理由などを書面で通知します(100条の2第4項)。再試験を行うのは、初心運転者期間が終わった時の住所地の公安委員会です(同条2項)。
- 通知から1か月以内に受ける。 通知を受けた日の翌日から通算して1か月を超えるまでに、再試験受験申込書を出して再試験を受けなければなりません(同条5項)。海外旅行・災害・病気やけが・身体の拘束・緊急の用務などのやむを得ない理由がある期間は数えません(施行令37条の4)。準中型・普通免許の再試験では、免許の効力が停止されている期間も数えません(同条6号)。
- 技能と知識の試験を受ける。 再試験は、免許の種類ごとに、運転について必要な技能と知識について行います。原付免許の再試験は知識だけです(100条の2第2項)。試験の方法は、通常の運転免許試験の技能試験・学科試験の規定を読み替えて使います(施行規則28条の2)。
- 不合格なら取消し。 再試験の結果、その免許で運転できる車を安全に運転するために必要な能力を現に有しないと認められたときは、免許が取り消されます(104条の2の2第1項)。
- 受けなければ取消し。 1か月以内に再試験を受けなかったときも、免許が取り消されます(同条2項)。この取消しの前には、意見の聴取が行われます(同条6項で準用する104条)。
再試験の手数料。 標準額は、普通免許の再試験で1,950円(公安委員会が用意する車で技能の試験を受けると2,750円)、原付免許の再試験で1,100円です(施行令43条1項の表の「再試験手数料」。物件費・施設費と人件費の合計)。
よくある誤解
「1年たてば違反の点数は関係なくなる」わけではありません。 再試験の通知は、初心運転者期間が経過した後に送られてきます(100条の2第4項)。期間中に基準に該当していれば、1年が過ぎてから再試験を受けることになります。
「3点の違反をしたら必ず再試験」ではありません。 3点の違反1回だけで合計3点になった場合は、施行令36条1号の括弧書きで除かれています。ただし、その後に1点でも違反をすると合計4点以上になり、36条2号で対象になります。
「1年」は、免許証を受け取ってからの暦の1年とは限りません。 初心運転者期間は、免許を受けていた期間が「通算して」1年に達するまでで、免許の効力が停止されていた期間は数えません(100条の2第1項)。
「再試験で取り消されても、すぐ取り直せば初心者扱いは終わる」わけではありません。 前6か月以内に同じ種類の免許を通算1年以上受けていた人は再試験の対象から除かれますが、再試験で取り消された免許はこの計算から外されています(100条の2第1項2号の括弧書き)。取り直した免許では、あらためて初心運転者期間が始まります。
初心運転者期間と関係する制度
- 違反点数: 再試験の基準に使う点数は、免許停止・取消しの点数と同じ施行令別表第二で付される点数です(違反点数の仕組み)。
- 標識の表示: 準中型・普通免許を受けていた期間が通算1年に達しない人は、内閣府令で定める様式の標識を車の前と後ろに付けて運転しなければなりません(71条の5第1項・2項、施行規則9条の7)。標識の義務から除かれる人の範囲は、再試験とは別に政令で定められています(施行令26条の4)。
- 二輪車の二人乗り: 大型二輪・普通二輪の免許を受けていた期間が通算1年に達しない人は、運転者以外の人を乗せて運転してはなりません(71条の4第6項・7項)。
- 取消しの件数: 警察庁の運転免許統計(令和7年版)によると、令和7年中の運転免許の取消し34,510件(申請による取消しを除く)のうち、「初心取消」は725件です。運転免許統計には、再試験の受験者数や初心運転者講習の受講者数の表はありません。
免許を受けて1年の間は、少ない点数でも再試験につながります。運転に慣れるまでは時間と気持ちに余裕を持ち、交通ルールを守って安全運転を心がけてください。
見かけた取り締まりを共有して、みんなの注意喚起に。
よくある質問
準中型・普通・大型二輪・普通二輪・原付の免許を受けた日から、その免許を受けていた期間が通算して1年に達する日までの期間です(道路交通法100条の2第1項)。免許の効力が停止されていた期間は数えないので、免停を受けるとその分だけ期間が延びます。
その免許で運転できる車の運転でした違反の点数の合計が3点以上になると対象になります。ただし、3点の違反1回だけで3点になった場合は除かれます。その後にもう1回違反をすると、点数の合計が4点以上になって対象になります。4点以上の違反なら1回で対象になります(施行令36条)。
初心運転者講習を終えた人は、再試験を受けなくてよくなります(道路交通法100条の2第1項4号)。講習は通知を受けた日の翌日から通算1か月以内に限って受けられます(108条の3第2項)。講習の後、初心運転者期間が終わるまでの違反で同じ基準にもう一度該当すると、再試験の対象に戻ります(同号の括弧書き・施行令37条の3)。
再試験の通知を受けた日の翌日から通算1か月以内に受けなければならず、受けなかったときは免許が取り消されます(道路交通法100条の2第5項・104条の2の2第2項)。取り消す前には意見の聴取が行われます(同条6項)。海外旅行・災害・病気などの理由がある期間は1か月に数えません(施行令37条の4)。
再試験の結果、その免許で運転できる車を安全に運転するために必要な能力を現に有しないと認められたときは、免許が取り消されます(道路交通法104条の2の2第1項)。
走行予定エリアを事前に確認し、「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりを回避する目的のものではありません。
都道府県別の取り締まりデータ
道路交通法違反の検挙件数(人口千人当たり・2023年度)は都道府県で差があります。全国平均は 36.1件。
47都道府県のランキングを見る本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。