70歳を過ぎて最初の更新が近づくと、公安委員会から「高齢者講習」の案内が届きます。75歳を過ぎると「認知機能検査」が加わり、違反歴によっては「運転技能検査」も受けることになります。3つはそれぞれ根拠の条文が違い、対象の決まり方と結果の扱いも違います。
何歳から何を受けるのか
道路交通法101条の4は、免許証等の更新を受けようとする人に、年齢に応じて次のものを受けていることを求めています。年齢は誕生日の当日ではなく、更新期間が満了する日における年齢で判断します。受ける時期は、どれも更新期間が満了する日前6か月以内です。
- 70歳以上: 高齢者講習(101条の4第1項。講習は108条の2第1項12号)
- 75歳以上: 高齢者講習に加えて認知機能検査(同条2項)
- 75歳以上で一定の違反歴がある人: さらに運転技能検査(同条3項)
公安委員会は、70歳以上の人に、受けなければならないものと、受けられる日時・場所などを書いた書面を送ります(101条の4第5項)。
ポイント:70歳から高齢者講習、75歳から認知機能検査が加わります。運転技能検査は、75歳以上のうち一定の違反歴がある人だけです。
年齢・違反歴ごとの一覧
| 更新期間が満了する日の年齢 | 高齢者講習 | 認知機能検査 | 運転技能検査 |
|---|---|---|---|
| 70歳〜74歳 | 受ける(2時間) | ― | ― |
| 75歳以上 | 受ける(2時間) | 受ける | ― |
| 75歳以上で一定の違反歴がある(普通自動車対応免許を持つ人) | 受ける(1時間) | 受ける | 受ける |
※ 道路交通法101条の4第1項〜3項による。高齢者講習の時間は施行規則38条12項4号。普通自動車対応免許以外の免許(二輪免許など)だけを持つ人の高齢者講習も1時間です。
令和7年中の実施状況は、高齢者講習の受講者が402万5,601人、認知機能検査の受検者が298万7,412人(うち「認知症のおそれあり」6万8,153人)、運転技能検査の受検者が15万6,513人でした(警察庁「高齢運転者対策の概要」令和8年版)。
高齢者講習(70歳以上)
高齢者講習は、加齢に伴う身体の機能の低下が運転に影響を及ぼす可能性があることを理解してもらうための講習です(道路交通法108条の2第1項12号)。
講習時間は2時間です(施行規則38条12項4号)。警察庁の資料によると、内訳は講義(座学)30分、運転適性検査器材による指導30分、実車指導60分です。器材では動体視力・夜間視力・視野を検査し、実車指導では指示速度による走行・一時停止・右左折・信号通過・段差乗り上げの課題を行います。
運転技能検査の対象の人と、普通自動車対応免許以外の免許だけを持つ人は、実車による検査が無く器材による検査だけになり、講習時間は1時間です(施行規則38条12項3号・4号)。
公安委員会以外が行う講習でも、一定の基準に適合する講習(108条の2第2項)や、認定を受けた運転免許取得者等教育の課程を、更新期間が満了する日前6か月以内に終えた人は、高齢者講習を受ける必要がありません(101条の4第1項ただし書・施行令37条の6の2)。
認知機能検査(75歳以上)
認知機能検査は、施行規則26条の3第1項が定める次の2つの方法で行います。
- 時間の見当識: 検査をしている時の年月日・曜日・時刻を書く(1号)
- 手がかり再生: 16の物の絵を名称・分類とともに示し、一定の時間がたった後に物の名称を書く(2号)
結果は、施行規則29条の3第1項1号の式(時間の見当識の点数に1.336、手がかり再生の点数に2.499を掛けて足す)で出した値が36未満だと、「認知症のおそれがある」基準に当たります。
基準に当たった場合、公安委員会は、臨時に適性検査(医師の診断)を行うか、期限までに医師の診断書を出すよう命じます(道路交通法102条2項)。その結果、認知症であることが判明したときは免許の取消しの対象になり、6か月以内に該当しなくなる見込みがあるときは免許の効力の停止になります(103条1項1号の2・施行令38条1項)。
基準に当たらなかった場合は、検査の結果によって更新が止まることはありません。
更新期間が満了する日前6か月以内に、認知症に当たる疑いがないかについての医師の意見と検査結果が書かれた診断書を公安委員会に出した場合などは、認知機能検査を受ける必要がありません(101条の4第2項・施行規則29条の2の3)。
運転技能検査(75歳以上で一定の違反歴がある人)
運転技能検査の対象は、75歳以上で普通自動車対応免許を持つ人のうち、施行令37条の6の3の基準に当たる人です(道路交通法101条の4第3項)。基準は、特定誕生日(更新前の免許証の有効期間が満了する日の直前の誕生日)の160日前の日より前の3年間に、施行令34条の3第5項の「基準違反行為」をしたことがあることです。
基準違反行為は、信号無視(法7条)・通行区分(17条)・最高速度(22条1項)・踏切の通過(33条)・交差点の右左折(34条)・交差点や横断歩道での優先(36条〜38条の2)・安全運転の義務(70条)・携帯電話使用等(71条5号の5)など16類型です。前回の運転技能検査で不合格の基準に当たらなかった場合、その検査を受けた日以前の違反は数えません(施行令37条の6の3の括弧書き)。
検査は、コースなどの走行(発進・停止・指定速度での走行)、交差点の通行(右折・左折)、段差の乗り上げ(停止)について、1,200メートル以上を走らせて減点式で採点します(施行規則26条の5)。成績が**70%未満(第二種免許を受けようとする人・受けている人は80%未満)**だと、公安委員会は免許証の更新をしないことができます(101条の4第4項・施行規則26条の6)。
課題ごとの減点点数と、2026年9月に公表された見直しの方向性は運転技能検査の見直しで詳しく解説しています。
更新のとき以外に受ける臨時の検査と講習
75歳以上の人が、認知機能が低下した場合に行われやすい違反として施行令37条の6の4が定める18類型の違反をしたときは、更新の時期でなくても、公安委員会が臨時に認知機能検査を行います(道路交通法101条の7第1項)。18類型には、信号無視(法7条)・通行禁止(8条1項)・通行区分(17条)・踏切の通過(33条)・交差点の右左折(34条)・横断歩道での歩行者の優先(38条)・徐行すべき場所(42条)・指定場所における一時停止(43条)・合図(53条)・安全運転の義務(70条)などが並びます。
- 違反をした日の3か月前の日以後に認知機能検査等を受けていた場合などは、臨時の検査は行われません(101条の7第1項・施行規則29条の2の5第1項)。
- 公安委員会は検査を行う旨を書面で通知し(101条の7第2項)、通知を受けた人は、通知を受けた日の翌日から通算1か月を超えるまでに検査を受けなければなりません(同条3項)。海外旅行・災害・病気やけがなど、やむを得ない理由がある期間は除かれます(施行令37条の6の5)。
- 臨時の検査で「認知症のおそれがある」基準に当たったときは、その前の直近の検査(3年以内に受けたもの)でも基準に当たっていた場合や、更新が近い場合などを除き、臨時の高齢者講習を受けることになります(101条の7第4項〜6項・施行規則29条の2の6)。
- 臨時の検査で基準に当たったときも、更新のときと同じく臨時の適性検査か診断書の提出に進みます(102条3項)。
手数料の標準額
| 手数料 | 標準額 | 内訳(物件費・施設費+人件費) |
|---|---|---|
| 認知機能検査 | 1,050円 | 400円+650円 |
| 運転技能検査 | 3,650円 | 1,150円+2,500円 |
| 高齢者講習(2時間) | 6,600円 | 2,200円+4,400円 |
| 高齢者講習(運転技能検査の対象の人・普通自動車対応免許以外の免許だけを持つ人) | 2,950円 | 700円+2,250円 |
※ 道路交通法施行令43条1項の表による。実際の額は都道府県の条例で決まります(道路交通法112条1項)。
よくある誤解
「75歳になったら全員が運転技能検査を受ける」わけではありません。 75歳以上の人が全員受けるのは認知機能検査です。運転技能検査は、そのうち普通自動車対応免許を持ち、更新前の一定の期間に16類型の違反をした人だけが対象です(道路交通法101条の4第3項・施行令37条の6の3)。
「認知機能検査で点数が低いと、その場で免許が取り消される」わけではありません。 認知機能検査そのものに合否は無く、「認知症のおそれがある」基準に当たった人は、医師の診断(臨時適性検査)か診断書の提出に進みます(102条2項)。取消し・停止の対象になるのは、認知症であることが判明したときです(103条1項1号の2)。
「70歳の誕生日を迎えたら高齢者講習」とは限りません。 対象かどうかは、更新期間が満了する日の年齢で決まります(101条の4第1項)。更新期間は、有効期間が満了する日の直前の誕生日の1か月前から有効期間が満了する日までです(101条1項)。
「運転技能検査に合格すれば高齢者講習は要らない」わけではありません。 101条の4第3項は「前二項に定めるもののほか」と定めていて、運転技能検査の対象の人も高齢者講習と認知機能検査を受けます。高齢者講習の時間が1時間になるだけです(施行規則38条12項4号)。
関係する制度
- サポートカー限定免許: 運転できる普通自動車を安全運転サポート車に限る条件を、自分で申請して付けられます(サポートカー限定免許)。
- 自主返納: 運転をやめる場合は、申請による免許の取消し(道路交通法104条の4)を受けることができます。
- 高齢運転者の事故の特徴: 統計で見た傾向は高齢ドライバーの事故の特徴でまとめています。
講習や検査は、年齢とともに変わる自分の運転を確かめる機会でもあります。結果にかかわらず、交差点や一時停止の場所では速度を落とし、周囲をよく確認して運転してください。
見かけた取り締まりを共有して、みんなの注意喚起に。
よくある質問
免許証の更新期間が満了する日の年齢が70歳以上の人です(道路交通法101条の4第1項)。更新期間が満了する日前6か月以内に、住所地の公安委員会が行う高齢者講習を受けていなければなりません。誕生日の当日の年齢ではなく、更新期間が満了する日の年齢で決まります。
いいえ。運転技能検査を受けるのは、75歳以上で普通自動車対応免許を持ち、特定誕生日(更新前の免許証の有効期間が満了する日の直前の誕生日)の160日前の日より前の3年間に、信号無視・速度超過・横断歩行者等妨害など施行令34条の3第5項の16類型の違反をした人です(道路交通法101条の4第3項・施行令37条の6の3)。75歳以上の人が全員受けるのは認知機能検査です。
その時点ですぐに取り消されるわけではありません。公安委員会が臨時に適性検査(医師の診断)を行うか、医師の診断書を出すよう命じます(道路交通法102条2項)。そのうえで認知症であることが判明したときは、免許の取消し、または6か月以内に該当しなくなる見込みがあるときは免許の効力の停止の対象になります(103条1項1号の2・施行令38条1項)。
検査の成績が70%未満(第二種免許を受けている人などは80%未満)だと、公安委員会は免許証の更新をしないことができます(道路交通法101条の4第4項・施行規則26条の6)。検査は更新期間が満了する日前6か月以内に受けていればよいとされています。
政令が示す標準額は、認知機能検査が1,050円、運転技能検査が3,650円、高齢者講習が6,600円(運転技能検査の対象の人や、普通自動車対応免許以外の免許だけを持つ人は2,950円)です(道路交通法施行令43条1項)。実際の額は都道府県の条例で決まります。
走行予定エリアを事前に確認し、「気をつけよう」という意識づけにご活用ください。取り締まりを回避する目的のものではありません。
都道府県別の取り締まりデータ
道路交通法違反の検挙件数(人口千人当たり・2023年度)は都道府県で差があります。全国平均は 36.1件。
47都道府県のランキングを見る本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。