2026年4月1日から、自動車等が自転車等の右側を通過するときの通行方法が、道路交通法に加わりました。自転車の青切符と同じ改正法(令和6年法律第34号)による、同じ日の施行です。
青切符ほど報じられていませんが、ドライバーにとっての影響はこちらのほうが大きいかもしれません。しかも、広まっている説明には法令に無い数値が混じっています。ここでは条文と警察庁の資料にあたって整理します。
何が加わったのか
警察庁の資料は、新しい義務をこう説明しています。
自動車等が自転車等の右側を通過する場合(追い越す場合を除く)において、両者の間に「十分な間隔」がないとき、 ○ 自動車等は、自転車等との「間隔に応じた安全な速度」で進行(道路交通法18条3項) ○ 自転車等は、できる限り道路の左側端に寄って通行(道路交通法18条4項)
対象になる車両は次のとおりです。
自動車、一般原動機付自転車、トロリーバス。この側に「間隔に応じた安全な速度で進行する」義務がかかります(第18条第3項)。
軽車両(自転車を含む)、特定小型原動機付自転車。この側に「できる限り道路の左側端に寄って通行する」義務がかかります(第18条第4項)。
義務は両側にかかります。「自動車だけが気をつける」ルールではありません。
「1.5m」は法令にも警察庁資料にも無い
このルールについて「1.5m以上空ける」「自転車が認識していれば1m、していなければ1.5m」といった説明が見られます。これらの数値は法令にも警察庁の資料にもありません。
警察庁が「目安」として示しているのは次の2つだけです。
※ 警察庁の資料は、これらについて「上記はあくまで目安です」と明記し、「十分な間隔」や「間隔に応じた安全な速度」は自動車等と自転車等との具体的な走行状況、道路状況や交通状況等により異なるとしています。詳細は必ず公式情報をご確認ください。
しかも警察庁は、この2つに「上記はあくまで目安です」という注記を付けています。条文が求めているのは数値ではなく、「十分な間隔」「間隔に応じた安全な速度」という、状況に応じて決まる考え方です。
ポイント:「1m」も目安であって、法令上の基準ではありません。1m空いていれば必ず適法、というものではなく、状況によっては足りないこともあります。
数値が独り歩きすると、「1.5m空けたから大丈夫」「1m空いているから問題ない」という受け取り方につながります。条文はそういう作りにはなっていません。
「追い越し」ではなく「追い抜き」
もうひとつ広まっている誤解が、これを「追い越しルール」と呼ぶことです。条文は「追い越す場合を除く」と定めています。
進路を変えて前の車両等の側方を通過し、その前方に出ることです。従来から別の規定が置かれています。
進路を変えずに前の車両等の側方を通過することです。今回加わった義務はこちらにかかります。
福岡県警も、この規定を「自動車等は、車道を同一方向に進行している自転車等の右側を追い抜きの形態で通過する際」と説明しています。日常的には、片側一車線の道路で自転車の脇をそのまま抜けていく場面が、まさにこれにあたります。
ポイント:ハンドルを切らずに自転車の脇を抜けていく——その場面こそがこの義務の対象です。「追い越すときのルール」と覚えると、対象を取り違えます。
なぜ加わったのか
警察庁が公表している改正法の概要は、理由をこう示しています。同一の方向に進行する自動車等対自転車の事故のうち、自転車の右側面が接触部位となる事故の割合は増加傾向にあり、令和4年は53%にまで増加した——というものです。そのうえで、車道における自動車等と自転車等の側方接触を防止するため、新たな義務を設けたと説明されています。
同じ方向に走っている自動車と自転車の事故のうち、半分を超えるものが自転車の右側面、つまり自動車が通過していく側での接触だということになります。
違反したらどうなるか
反則行為の名称としては、従来からあった「歩行者側方安全間隔不保持等」が「歩行者等側方安全通過義務違反」に改められ、その定義が道路交通法第18条第2項に加えて第3項にも及ぶように広げられました。基礎点数は2点です。
さらに重いのが、妨害運転(あおり運転)との関係です。警察庁は、2026年4月1日にこの規定が施行され、同通行方法の違反が妨害運転の違反類型に追加されたと公表しています。妨害運転罪は最大3年の拘禁刑、著しい交通の危険を生じさせた場合は最大5年の拘禁刑で、妨害運転をした者は運転免許を取り消されることとされています。
自転車の側の違反は「被側方通過車義務違反」(第18条第4項)で、反則金5,000円が定められています。
※ 「歩行者等側方安全通過義務違反」は、従来の「歩行者側方安全間隔不保持等」を改称し、対象に第18条第3項を加えたものです。妨害する目的で行った場合は妨害運転の違反類型にも当たり、その場合は免許の取消しの対象となります。詳細は必ず公式情報をご確認ください。
ドライバーが気をつけること
数値の目安に頼るより、条文の考え方をそのまま持っておくほうが安全です。自転車の脇を抜けるとき、間隔が十分でないと感じたら、その間隔に見合うまで速度を落とす——それがこの義務の中身です。
自転車は、路面の穴やちょっとした段差、風などでふらつきます。1m空いているつもりでも、自転車がわずかに右へ振れれば足りません。速度を落とせば、その振れに対応できる余地が生まれます。抜けるのを少し待つ、という選択も同じ効果を持ちます。
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よくある質問
「1.5m」という数値は法令にも警察庁の資料にもありません。警察庁が目安として示しているのは「少なくとも1メートル程度」で、しかも資料には「上記はあくまで目安です」と明記されています。条文が求めているのは数値ではなく「十分な間隔」と「間隔に応じた安全な速度」です。
警察庁は目安として、1メートル程度の間隔を確保できない場合には時速20キロメートルから30キロメートル程度で運転するよう示しています。ただしこれも目安であり、実際に求められる速度は具体的な走行状況、道路状況、交通状況等により異なるとされています。
違います。条文は「追い越す場合を除く」と定めており、進路を変えずに側方を通過する場合(追い抜き)が対象です。追い越しには従来から別の規定があります。
反則行為としては、従来の「歩行者側方安全間隔不保持等」が「歩行者等側方安全通過義務違反」に改められ、その対象に今回の規定が加わりました。基礎点数は2点です。また、他の車両等の通行を妨害する目的で行った場合は妨害運転の違反類型に追加されており、妨害運転をした者は運転免許を取り消されることとされています。
あります。自動車等との間に十分な間隔がないときは、自転車等はできる限り道路の左側端に寄って通行しなければならないとされています(道路交通法第18条第4項)。この違反は「被側方通過車義務違反」として反則金5,000円が定められています。
本記事は安全運転の注意喚起を目的とした一般的な情報提供です。取り締まりの回避を勧めるものではありません。最新かつ正確な情報は、警察庁・各都道府県警察などの公式情報をご確認ください。